金本位制の歴史と崩壊『通貨のリミッターは切られ国富を奪う』

金本位制の歴史と崩壊『通貨のリミッターは切られ国富を奪う』

かつての世界の通貨は、金(ゴールド)が通貨価値の基準である「金本位制」が世界標準でした。

しかし、いつしか金と通貨の関係は切り離され、現在では先進国を中心に当たり前のように量的金融緩和などが行われ、通貨を大量に刷ることが可能になっています。

それと同時に、世界経済に対する金融部門の影響力は高まり、大きな貧富の差を生んでいます。

そこで今回は、金本位制とはなにか?その歴史と金本位制がなぜ崩壊してしまったのか?現在の通貨の価値とはなにか?を見て、考えていきましょう。

金本位制は19世紀初頭にイギリスから始まり世界中に広がった

金本位制の歴史を遡れば、19世紀初頭イギリスで初めて金本位制が採用された後、西欧諸国が続々と金本位制に移行するようになりました。

各国の中央銀行は発行した紙幣と同額の金を保有していたので、それぞれの国の紙幣はその額面と同額の金との交換が保証されていました。

金本位制時代の紙幣は、その額面と同額の金との引換券だったわけです。

日本で金本位制が採用されたのは1897年で、1900年にアメリカでも金本位制が法制化されるなど、金本位制は西欧諸国だけでなく、急速に世界中に広がりました。

 

金がアメリカ一国に集中し金本位制は形を変える

先ほども述べましたが、金本位制時代には、通貨の価値を担保するものは金でした。

しかし、第一次世界大戦から第二次世界大戦のあいだに、金本位制から離脱したり戻ったりする国が現れ、第二次世界大戦末期には、世界中の富である金の80%以上がアメリカ一国に集中するようになりました。

それが原因で、他国が金本位制をとろうとしても金が不足しているため通貨を発行できない状態となりました。

そして、金の不足を解決するために、ブレトン・ウッズ体制が定められたのです。

 

ブレトン・ウッズ体制により世界の中心となる通貨は米ドルに

ブレトン・ウッズ体制とは、米ドルを世界の基軸通貨とする固定相場制で、金1オンスを35米ドルと定め、各国の通貨と米ドルの為替レートを一定に保つドルペッグ制のことです。

日本の場合ですと、戦後1949年にGHQが1ドル = 360円の為替レートを設定し、1971年まで同レートが維持されてました。
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金と交換できる米ドルと一定のレートで両替を可能にすることで、各国の通貨の信用が担保されるブレトン・ウッズ体制は、擬似的金本位制と呼ばれています。

このブレトン・ウッズ体制の誕生で、世界の中心となる通貨は米ドルとなったのです。

 

1971年のニクソン・ショックにより金本位制は崩壊

それから数十年後、1971年のニクソン・ショックにより、金とドルの交換が停止されたことで、金と米ドルを介した各国通貨との価値の連鎖は完全に絶たれ、1973年から各先進国は為替相場制に移行し、通貨と金は分離して動き出すようになりました。

このような歴史があり、今現在、世界経済に対する金融部門の影響力が高まったのです。

 

金本位制の崩壊で通貨を無限に増やせるようになった

金はなぜ価値があるのかというと、希少性のため(世界の埋蔵量が決まっている・限界がある)価値が失われないのです。

金本位制のもとでは、紙幣と金との交換が保証されていることで、お金の価値が担保されていたのです。

ある国が新たに紙幣を発行する場合、中央銀行がその額面と同額の金を、裏付けとして保有しなければならなかったのですが、ニクソン・ショックを機に、金と通貨が切り離され、通貨だけを大量に発行できるようになりました。

通貨の量を無限に増やせることになり、経済の拡大を容易に行うことができるようになったと同時に、通貨量のリミッターが切られたのです。

 

国富(国の価値)が通貨の担保になった

金と通貨が切り離されてしまった現在では、一体何が通貨の担保になるのでしょうか?

それは、通貨の価値は国の価値となっており、政府、家計、企業など国全体の資産から負債を差し引いた資産『国富』が担保になっているのです。

かつては、通貨と金との引換券であったように、現在の通貨は国富との引換券となっています。

 

国家は主権として強制的に国民から富を奪い取れる

国家は主権として徴税権通貨発行権を持っています。

徴収権:万一、国が国債を償還できなくなった場合、徴税権を行使し、企業や個人から税金という形で富を吸い上げ、国債の償還に充てることが可能(理論的には)

通貨発行権:通貨(お金)を大量に刷ることで国が借金を返済することが可能

 

通貨発行権は通貨の希薄化を起こす

通貨発行権を行使し、お金を大量に刷ると、通貨の価値が目減りする通貨の希薄化が起こります。

国富が一定だと仮定すると、その国富との引換券である通貨の量を増やすと、紙幣一枚あたりの価値が目減りします。

例えば、100万円の国富を担保に100枚発行されていた一万円札を200枚に増やせば、一万円札の価値は5000円の価値へ半減するのです。

量的金融緩和で通貨の価値が下落し、通貨安になるのもこの通貨の希薄化が要因なのです。

 

まとめ

  • 金本位制は19世紀初頭にイギリスから始まり世界中に広がった
  • 金がアメリカ一国に集中し金本位制は形を変える
    ブレトン・ウッズ体制により世界の中心となる通貨は米ドルに
  • 1971年のニクソン・ショックにより金本位制は崩壊
    金本位制の崩壊で通貨を無限に増やせるようになった
  • 国富(国の価値)が通貨の担保になった
    国家は主権として強制的に国民から富を奪い取れる
    通貨発行権は通貨の希薄化を起こす

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