イノベーションはバブルを起こす『バブルの歴史、鉄道バブルと自動車バブル』
新しいテクノロジーや産業の登場は、投資家の想像力を強く刺激します。鉄道、自動車、インターネット、スマートフォン、クラウド、人工知能など、社会を変える技術は実際に大きな富を生み出してきました。
新しいテクノロジーは、なぜバブルを起こしやすいのか
新しいテクノロジーが登場すると、投資家は現在の利益ではなく、将来の市場規模を先に織り込みます。これは自然なことです。鉄道、自動車、インターネットのように、社会の基盤そのものを変える技術であれば、将来の利益が巨大になる可能性があるからです。
しかし、ここで問題になるのは、産業全体が成長することと、すべての関連企業が投資に値することは別だという点です。新しい産業が本物であっても、勝ち残る企業は限られます。多くの企業は過剰投資、競争激化、資金調達環境の悪化によって淘汰されます。
NASDAQの参考チャート
下のチャートは、テクノロジー株の長期的な熱狂と調整を見るための参考です。ITバブル期、金融危機後の成長、コロナ後の金融相場、AI相場を一つの流れで見ると、技術革新と株価評価が必ずしも同じ速度で進まないことがわかります。
現在の相場を確認できる自動更新チャートです。本文の分析は執筆当時の市場環境に基づくため、最新チャートとあわせてご確認ください。
鉄道バブルが教えていること
鉄道は、物流、移動、都市形成、産業発展を大きく変えました。鉄道という技術自体は間違いなく社会を進歩させました。しかし、鉄道会社や関連企業の株価がすべて正当化されたわけではありません。
投資家は、新しいインフラが社会を変えるという期待から、利益の見通しが曖昧な企業にも資金を投じました。その結果、過剰な鉄道建設、採算の合わない路線、競争過多が発生し、バブル的な評価はやがて調整されました。
自動車バブルが教えていること
自動車もまた、人々の生活を根本的に変えた技術です。しかし、自動車産業の初期には数多くのメーカーが乱立し、最終的に長期で生き残った企業は限られました。
ここで重要なのは、産業の未来を当てることと、勝ち残る企業を当てることは別の難しさを持つという点です。自動車が普及することを正しく予想できたとしても、どの企業が高い利益率を維持し、どの企業が淘汰されるかを見極めるのは簡単ではありませんでした。
ITバブルとAI相場の共通点
ITバブルでは、インターネットが世界を変えるという見方は正しかったと言えます。しかし、当時高値で買われた多くの企業は利益を出せず、資金調達が止まると急速に失速しました。
AI相場にも同じ構造があります。AIは実際に生産性や産業構造を変える可能性があります。しかし、AI関連というだけで、将来の利益を過度に織り込んだ株価になっている場合は注意が必要です。
投資家が見るべきなのは、技術の話題性ではなく、その企業が本当に持続的な利益を生む位置にいるかどうかです。データ、顧客基盤、価格決定力、設備投資負担、競争優位性を分けて見る必要があります。
バブル崩壊後に本当の勝者が見えてくる
新しいテクノロジーのバブルでは、熱狂の最中よりも、崩壊後の方が本当の勝者を見極めやすくなります。資金調達が簡単な時は、多くの企業が成長しているように見えます。しかし、資金調達環境が厳しくなると、利益を出せる企業と出せない企業の差が明確になります。
鉄道、自動車、ITの歴史を見ても、社会を変える技術は残りました。一方で、投資家が高値で買った多くの企業は残りませんでした。ここに、テクノロジー投資の難しさがあります。
長期投資家が持つべき視点
新しい技術に投資すること自体は悪いことではありません。むしろ、長期的な資産形成では、社会の変化を取り込むことは重要です。ただし、テーマ性だけで買うのではなく、価格と利益の関係を見る必要があります。
技術が本物であること、産業が成長すること、投資家が儲かることは、それぞれ別の問題です。この3つを分けて考えられるかどうかが、テクノロジーバブルに巻き込まれないための基本になります。