インフレが起こった時は投資家としてどう行動するべきか『インフレの恐怖、国家は私たちを守れない』
もし、日本でハイパーインフレが起きてしまったら、どう行動しますか?
前回は『今後円安に進む可能性が非常に高い』ということをお伝えしましたが、今回は私たちが経験したことのないインフレ恐怖をお伝えします。
インフレが持つ光と闇。
それを十分に理解していないと、インフレの波に飲み込まれてしまいます。
貯金(現金)を飲み込むインフレの波
私たち日本人の多くはデフレの世界にすっかり慣れ切ってしまっていて、インフレの怖さを知りません。
デフレの時代は不景気とセットになっているので、給料も上がらず、生活が楽にならないイメージがありますが、本格的にインフレが起こった場合の生活の苦しさはデフレの比ではありません。
インフレ時代には資産運用や資産防衛について、根本的に考え方を変える必要があります。
インフレ時代において現金は禁物
日本人は貯金が好きな国民として知られていますが、インフレ時代に現金は禁物です。
インフレによる通貨の下落は、なんらかの形で物価の上昇をカバーするような商品に投資しておかないと、何もしなくても自身の資産を減らすことになってしまいます。
米国や英国のように、経済成長を伴った形でインフレが進むのであれば、それほど気にする必要はないかもしれません。
多少時間が遅れるかもしれませんが、給料は物価に合わせて上昇していきますし、株価や不動産価格も同じように上昇して行くからです。
問題なのはスタグフレーション
スタグフレーションとは、インフレは進むものの、経済成長が伴わない状況になることです。
スタグフレーションが発生してしまうと、物価は上がるもののGDPが増えませんから、経済は活発にはなりません。
物価が継続的に下落するデフレの時代であれば、企業は販売数量を維持するため、商品の値段を下げることで対応します。
しかしスタグフレーションの時代は、原材料費が値上がりしているので、企業は商品の値段を下げることができず、内容量を減らすなど実質的に値上げするなどで対処したり、一部の商品は、販売不振でも値上げが実施されることになります。
企業の利益は増えませんから、従業員の給料も上がりません。
給料が増えない中商品の値上げが相次ぎ、ますます商品が売れなくなって企業の経営が苦しくなる。
スタグフレーションとはこの悪循環が起こることを言います。
スタグフレーションを想定することが大事
日本がインフレ経済に転換するとして、望ましいのは順調な経済成長を伴った健全なインフレです。
しかし、アベノミクスが成功して、日本がこうした形でインフレに移行できるかは、まだ判断できる状況にありません。
私たち投資家として行動する以上、常に最悪の展開を頭に入ておく必要があります。
前回お伝えした通り世界的なドル高傾向、日本の経常赤字など、マクロな状況を総合的に判断すると、健全な形であれ、そうではない形であれ、インフレに移行する可能性は高いと考えることができます。
それと同時に、もしアベノミクスがうまくいかずスタグフレーションが発生する可能性も高くなってくると感がることができます。
したがって、基本的な投資戦略もスタグフレーションの発生を前提にしたものにしておくのが良さそうです。
アベノミクスが成功した場合にも、ほぼ確実にインフレは進行することになるので、おおよその投資スタンスに変化はありません。
※アベノミクスの本質はインフレを起こすことです。
スタグフレーションが起こった場合に投資すべき銘柄
70年代の米国は、ベトナム戦争による財政危機、製造業の競争力低下、そしてオイルショックによる石油価格の上昇によりスタグフレーションに陥りました。
1970年から1980年にかけての10年間に、米国の消費者物価は約2倍に上昇しました。
年率に換算すると7.5%ですから、これはかなりの上昇です。
同時期における実質GDPの成長率は平均3.1%でした。
物価の上昇が実質GDPの成長率を大幅に上回りましたから、これはスタグフレーションに陥ったと言えるでしょう。
この時、ダウ平均株価は、600ドルから1000ドルの間を行き来していました。
70年代前半は物価の上昇に伴って株価も上昇していたのですが、米国企業の競争力の低下が目立ってくると、株価は年々下がってしましました。
物価の上昇に強い企業
スタグフレーションに陥ってしまっていた時期の米国の個別銘柄を見てみます。
- P&G(生活必需品)
- GE「ゼネラル・エレクトリック」(製造業のとして重電大手)
- GM「ゼネラス・モーターズ」(自動車大手)
この3銘柄は、米国を代表する企業です。
スタグフレーションに陥ってしまっていた時期の物価の影響を考慮した株価の騰落率を見てみると、3社とも株価が物価の上昇に対して追いついていた値動きをしていました。
ある程度の基礎体力があり、グローバルに展開している、あるいはインフレの状況下でも需要が減らない商品を扱っている企業の株価は、スタグフレーションに陥ってしまっている状況でも、物価の上昇に応じた株価の上昇を果たしてくれて、資産の防衛をすることが可能だと言えます。
逆に言うと、新興企業や国内に利益の大半を依存している企業などは、インフレによる株価の上昇はするものの、物価の上昇率には追いつけない場合が多いのです。
日本の企業にあてはめるならどの銘柄なのか?
- トヨタ自動車(7203)
- 富士重工(7270)
- ソフトバンク(9984)
- 花王(4452)
- ファーストリテイリング(9983)
などがあてはまると予想されます。
日本は過去に一度ハイパーインフレを経験している
インフレが進行しすぎて、その国の財政状況に対して市場から疑問符が突きつけられると、インフレは一気に加速します。
ハイパーインフレの代表的な例としては、第一次世界大戦後のドイツがあります。
インフレ開始からある程度物価が落ち着くまでの5年間に、ドイツの物価は約1兆倍に膨れ上がりました。
太平洋戦争後の日本でも、ドイツほどではありませんが、かなり深刻なインフレを経験しています。
日本でのハイパーインフレの原因はGDPの200%にのぼる政府債務
太平洋戦争時に経済的な体力を無視した戦費の捻出や政府による市場の介入のために、国債の無制限な発行によって、太平洋戦争末期には、日本の政府債務がGDPの200%まで膨れ上がっていました。
敗戦が確定し戦争被害によって、生産能力のほとんどを失われてしまった日本には、政府債務を返済できるはずがなく、激しいインフレに見舞われました。
ドイツに比べると穏やかですが、終戦から5年の間に、消費化物価指数は約30倍、卸売物価は約60倍に跳ね上がりました。
現在の日本の政府債務はハイパーインフレを経験した時と同じ水準
現在の日本の政府債務は、太平洋戦争末期と同じ水準でかなり深刻な状況にあります。
日本の崩壊や日本の財政破綻を唱えている人たちはこのことを言っていると思われます。
しかし、当時とは日本の経済の基礎体力が違いますから、今の日本が財政破綻するとは判断できません。
とは言っても、他の先進国と比較してみると日本の財政状況の悪さは突出しています。
現在、日銀が量的緩和を実施していることも、国債の価格を維持しているため一気に値崩れする可能性は低いのですが、市場は突如として思いもよらぬ動きをするので注意していなければなりません。
もし国債が暴落してしまうと尻拭いをするのは私たちです
仮に、日本の国債が暴落してしまうことがあるとしたら、このツケを払うのは私たち日本国民なのです。
激しいインフレが進行したとしましょう。
国家はこれを収束させるために、税金を上げ、物価を上げ、年金や子ども手当の削減、失業保険や生活保護費の廃止など、様々な国の援助を排除するでしょう。
また、こうした非常手段がなかった場合でも、現金はすぐに紙切れになってしまいます。
私たちの資産を守るためには、適切な手段で投資をすることが必須となるのです。
まとめ
- インフレ時代に現金を持つことは資産を減らす
- スタグフレーションとは物価の上昇と経済の発展が釣り合わない状況
- スタグフレーションが起こった場合は適切銘柄に投資をする
- 日本は戦後にハイパーインフレを経験している
- 国家は私たちを守りきることができない