『為替の基本的な考え方』米ドル・ユーロ・日本円の動向(金利やインフレ)が最も為替・株式相場に影響する

『為替の基本的な考え方』米ドル・ユーロ・日本円の動向(金利やインフレ)が最も為替・株式相場に影響する

FX(金利差益のため)や外貨建ての資産に投資を行った場合など、投資対象の株式や債券の値動きよりも為替の値動きの方が大きいことなどよくあり、海外投資を行う上で、為替とは切っても切れない関係です。

日本の株式だけに投資している人でも、日本の株式市場はドルと円の関係で非常に値動きが激しくなります。
円安になると株は上がりやすく円高になると下がりやすい

その値動きを予想することと、があります。

世界の為替相場や経済の行方、それに伴う株価などは、米国・欧州・日本の金融政策や中央銀行の発言(イベント)が鍵を握っています。

その中でも特に米国の金融政策やFRBの発言などは、世界中の市場に影響を与える指標になりますので、注目するべき点です。

そこで今回は、為替相場の動向を予想する上で知っておくべき基本的な考え方と、為替相場が大きく動く中央銀行のイベントや、どのような指標が大きく関与するのかを考えてみます。

為替の変動を予測するための基本的な考え方はインフレと金利

経済学的には、いくつかの要素が為替水準を決定付けるとされていますが、実際の値動きを見るには理論通りに動かないことはよくあり、どちらかといえば、市場イベントや人々の予測を頼りに動きます

為替の変動には、あまりにも多くの要因が関わっているため、何が原因でどのように動くとは一概にいえるものではありませんが、為替を予測するために知っておくべき基本的な考え方があります。

 

インフレが起これば通貨は安くなるという考え方

お金の価値(為替相場)は、そのお金でどれだけの物を買うことができるかによって決まるという考え方があります。

これを説明する際に必ず引き合いに出されるのが、ビッグマック指数です。

例えば、マクドナルドのビッグマックは日本では300円、米国では3ドルだから、300円と3ドルは同じ価値である。という指数です。

ここでもし、日本の物価が上昇(インフレ)し、ビッグマックが400円となった場合、400円と3ドルが等しくなりますので、1ドルは133円と、100円から133円へ円安になる計算になります。

マクドナルドが各国で設定している価格が、必ずしも正しいわけではありませんが、簡単な考え方としては的外れではないといえます。

新興国のように、インフレ率の高い国が通貨安に傾きやすい理由の一つは、このような仕組みによるものだと考えられています。

しかし、この考え方は短期的な為替の変動では説明がつかないため、あくまでも長期的な指標であることが注意点です。

また、現代においては、お金は物を買うためではなく、金利や為替差益を得るなど、投資目的で流通しているお金の量の方が多いため、購買行為が為替レートにあたえる影響は、そこまで大きくないと考える人も多くいます。

 

金利の差により将来の為替水準が変動するという考え方

金利の高いトルコリラのような通貨は、日本円のように金利の低い通貨に対して、毎年金利差分だけ通貨安になる傾向があるという考え方です。

例えば、日本円には0.1%の利子がつき、トルコリラは7.5%の利子がつく場合、為替の変動がないのであれば、誰も日本円で預金する人はいなくなり、みんながトルコリラで預金をして、高金利を得たほうが得になります。

しかし、そのような甘い話はなく、金利が高い国の通貨、例の場合だとトルコリラは、金利を得た分だけ通貨安になり、結局、日本円とトルコリラのどちらで預金していても利益は変わらないという考え方です。

 

金利の差による変動はイレギュラーなことが多い

ですが、実際には、円キャリートレード取引のように(外国人投資家から見て)米ドルなどの自国通貨を担保に円などの低金利通貨を低利で借りてレバレッジをかけ、それを高金利通貨に投資することは一般的に行われているのです。

また、国家の金融政策としても通貨下落を阻止するために利上げをして、高金利の得られる魅力的な通貨であることを演出する場合もあります。

さらに、米ドル/円の為替レートは、日米の金利差と相関が高く、米国の金利が高くなれば円安ドル高になりやすいことも、よく知られています。

 

基本的な為替の考え方がその通りに動くとは言い切れないが覚えておく必要はある

上記のようにインフレ率と金利がどのように作用するかは、為替を考える上で必ず覚えておく必要がありますが、インフレ率も金利も時間とともに変化します。

また、米国(米ドル)・欧州(ユーロ)・日本(円)を中心とした先進国の動向は、為替相場に大きく関わります。

お金の供給量(インフレ)と利上げと利下げ(金利)が、為替相場と非常に親密な関係にある。ということをしっかり覚えておけば、今、世界がどのような方向に進んでいるかを合わせて考えることができ、適切な判断ができるのです。

 

金利が動けば為替と株式が動く(日本やドイツ(輸出が盛んな国)の場合)

金利の動向で基本的に為替と株式がどのように動くかを見てみます。

金利上がる = 通貨上がる = 株式下がる

金利下がる = 通貨下がる = 株式上がる

この公式が必ず当てはまるとは言い切れませんが、先進国(特に日本やドイツなどの輸出が盛んな国)に多く見られる傾向があります。

国の政策で利上げをすると、基本的には株価は下がります

それは、金利が上がるとお金の供給量が減りやすくなるからです。

 

特に米国が利上げをすると、世界の株式市場に大きな変動をもたらします

利上げは、株式市場や経済を安定させるためには必ず必要なことなのですが、その時期を間違うと、経済成長を阻害してしまったり、デフレに陥ってしまったりします。

近年、米国の利上げが進むと市場では予想されています

その利上げの時期を誤ってしまえば、世界経済(特に新興国)の経済成長を脅かすだけでなく、最悪の場合、新興国を中心とした通貨危機金融危機を引き起こす可能性もあります。

 

米国・欧州・日本の中央銀行の発言は大きく為替相場を変動させることがある

各国の通貨供給量を含め、大きな視点で経済の流れを把握するには、各国の中央銀行の発言が重要になってきます。特に、世界経済をコントロールする立場にある米国、欧州、日本の発言は、為替相場を大きく変動させることがよくあります。

 

FOMC(米国連邦公開市場委員会)は要注目するべきイベント

その中でも、FRB(米国連邦準備制度理事会)の2016年現在議長であるイエレンの発言するFOMC(米連邦公開市場委員会)は、世界中に大きな為替変動をもたらすイベントですので、要注目です。

FOMCは、米国の金融政策、金利、市場に流通するお金の量、市中銀行の貸出姿勢に影響するマネタリーベースなどを検討するための会議です。

また、FOMCでは、フォードガイダンスと言われる、今後の政策を占うためのヒントを出すこともあるため、長期投資をしている人ならば必ず内容を理解しておくべきと考えます。

 

ECB(欧州中央銀行)の発言も大きく為替に影響する

欧州では、ECB(欧州中央銀行)の現総裁であるドラギの率いるECB政策理事会に注目します。

ユーロの金利水準決定や財政危機に直面しているEU加盟国の支援などは、ECBが決定します。

近年騒がれているギリシャの財政問題の際には、財政が軟弱化した国への支援をEU全体が行いますので、結局のところは、財政がもっとも豊かなドイツが出費を強いられることが問題となり、ドイツがユーロを離脱する可能性なども論じられました。

一方、ドイツも統一通貨ユーロのおかげで、貿易で超過利益を上げられている。という批判もあるなど、国家間の足並みを揃える難しさはEUの課題です。

実際に、2016年にイギリスがEUを離脱したことにより、その他の加盟国がどのように動くかなど、今後のEUの未来には懸念される材料が多くあります。

もし、ユーロが廃止されることになった場合は、世界中を大混乱に巻き込むことは避けられません。

 

輸出大国ドイツはユーロのおかげで貿易が有利になっている

ドイツがユーロではなくマルク(ユーロに変わる前の通貨)を使っていれば、貿易で利益が出れば出るほどマルクは買われることになり、また財政も安定していますので、マルクの信頼性も高くなります。

その結果、貿易黒字によるドイツマルク高を引き起こし、逆に貿易競争力と利益を低下させる要因になり、貿易黒字はユーロを使っているよりも減っていた可能性が高いのです。

しかし、現在のドイツでは、貿易決済のほとんどに統一通貨ユーロを採用しているため、ドイツの貿易黒字が積み上がっても自国だけ通貨高になることはありません

 

日銀金融政策決定会合での発言は日本円に大きく関与する

日本においては、日銀の現総裁(2016年)である黒田の発言する、日銀金融政策決定会合に今後の日本経済を占う重要な要素が含まれています

2008年4月9日〜2013年3月19日まで就任していた前日銀総裁の白川が、リーマンショック後の重要な時期に、デフレ脱却のための金融政策に消極的であったため日本経済が弱体化したとされるほど、日銀の金融政策は、日本経済の鍵を握っているといっても過言ではありません。

 

金融緩和は通貨供給量を増やし通貨安の要因になる

通貨供給量(出回るお金の量)が多くなると、通貨安になります。

この考え方が正しいとするならば、現在日本と欧州で行われている金融緩和は、通貨安を引き起こします。

お金は、そもそも物を買うための道具であることは間違いないので、市場にお金を過剰供給すると、人々にお金が行き渡り、たくさんの物が買えるようになり景気が良くなりますが、度が過ぎると「物は品薄だがお金は余っている。物の方が貴重だから少しのお金では物を譲り渡すこはできない」という状況をつくり、過度なインフレを引き起こす可能性があります。

しかし、ここも判断が難しいところではあるのですが、2012年のドル・ユーロ・ポンドの為替相場『円史上最高値時代からの転換期』の前半を見てもらえばわかるのですが、米国も欧州も日本も金融緩和を行ったのですが、日本円だけが極度の通貨高になりました。

これは、通貨安競争のように、多数の国が金融緩和をすれば、より多くの通貨を供給させた国が通貨安になり、弱い金融緩和では通貨高になる傾向もあるのです。

 

米国・欧州・日本の経済指標も為替相場に影響を与える

国力を数値化したともいえる、雇用統計、不動産関連指標、GDP、貿易収支などの経済指標は短期的な為替水準に大きく影響を与えます

経済指標を見る際には、その数値が良いか悪いかではなく、事前に世界の証券会社のアナリスト予測として発表されている予測値と、実際の数値を見ます

その予測値と発表された値がほとんど同じであれば、為替相場はあまり反応しません。

 

市場の予想と実際の値に乖離があれば為替相場は大きく動く

例えば、アナリスト予想よりも雇用統計が改善されていれば「経済に対する明るい見通しで景気が回復している」となり、通貨と株価が上がりやすくなります。

しかし、必ずしも強い雇用統計が株高通貨高に動くとは限らず、市場が何に注目しているかにより異なる動きをします。

現在(2016年)ならば、市場は米国の利上げに注目していますので、米国の雇用統計が予想よりも改善されていれば「経済が明るい見通しで景気が回復している=経済を正常な状態に戻すための利上げが行われる」となり、通貨は高くなりますが株価は下落すると考えられます。

 

日本の長期金利は経済の理論の逆に動いた

現在(2015年9月)、日銀は市場でたくさんの国債を買っています。日銀が国債を持つというのは、借金の帳消しにあたる行為ですので、財政規律を乱し、財政的には良くないと考えられます。

そうであれば、当然国債の信頼は低下して価格は下落、金利は上昇するのが経済の理論ですが、実際には、日銀が国債を買い集めているため、国債は品薄となり逆に国債価格は上昇(金利低下)しています。

これには、様々な意見があります。

日本は世界一の債権国であることや、自国の保有している資産が莫大にあることなどが国債の信用につながっているとの意見もあれば、一方、それでも経済の理論に法って日本国債暴落に賭ける投資家もいるのです。

 

まとめ

  • 為替の変動を予測するための基本的な考え方はインフレと金利
    インフレが起これば通貨は安くなるという考え方
    金利の差により将来の為替水準が変動するという考え方
    金利の差による変動はイレギュラーなことが多い
    基本的な為替の考え方がその通りに動くとは言い切れないが覚えておく必要はある
  • 金利が動けば為替と株式が動く(日本やドイツ(輸出が盛んな国)の場合)
    特に米国が利上げをすると、世界の株式市場に大きな変動をもたらします
  • 米国・欧州・日本の中央銀行の発言は大きく為替相場を変動させることがある
    FOMC(米国連邦公開市場委員会)は要注目するべきイベント
    ECB(欧州中央銀行)の発言も大きく為替に影響する
    輸出大国ドイツはユーロのおかげで貿易が有利になっている
    日銀金融政策決定会合での発言は日本円に大きく関与する
  • 金融緩和は通貨供給量を増やし通貨安の要因になる
  • 米国・欧州・日本の経済指標も為替相場に影響を与える
    市場の予想と実際の値に乖離があれば為替相場は大きく動く
    日本の長期金利は経済の理論の逆に動いた

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