中央銀行(日本銀行)が行う金融政策は金利を操作することで物価の安定を図る
『お札より硬貨の方が価値がある?』貨幣と紙幣の違いと中央銀行の役割で、中央銀行が行う通貨発行などについて触れました。
では、中央銀行が通貨を発行するのはどのような理由からなのでしょうか?
それは、金利を誘導することで物価を調整することなのです。
それでは、中央銀行が行う金融政策と政府が行う財政政策について考えていきたいと思います。
中央銀行が行う金融政策は金利を操作すること
現在の日本では、金融政策は中央銀行、財政政策は政府、と分離されている財金分離原則に従って、政策が行われています。
政府が行う財政政策は、財政出動による公共事業や減税政策、企業などへの補助金、消費拡大のための助成などがあります。
資金を供給や吸収するオペレーションを行い金利を操作する
中央銀行が行う金融政策とは、日銀が公開市場操作いわゆるオペレーションなどを行い、短期金融市場の金利を誘導することによって実施されます。
オペレーションとは、日銀が、金融機関に対する貸出を増減させたり、金融機関との間で国債などの金融資産の売買を行うなどして、日本銀行にある金融機関の当座預金を増減させ、短期金融市場におけるお金の量を調整することです。
景気の動向で資金を調整する
日銀が行うオペレーションには、二つ種類があります。
- 資金供給オペレーション:短期金融市場に資金を供給する
- 資金吸収オペレーション:短期金融市場から資金を吸収する
わかりやすく言えば、資金供給オペレーションは、景気が減速した場合に短期金融市場の金利を低めにし、お金を借りやすい環境を作り、資金吸収オペレーションは、景気が過熱した場合に短期金融市場の金利を高めにし、お金を貸しにくい環境を作ります。
こうすることによって、物価の上昇を促したり抑制したりするのです。
物価の緩やかな上昇(安定)を目指す金融政策
日本銀行は、通貨及び金融の調整を行うにあたっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする
と、日本銀行法第二条で定められている通り、日本の中央銀行である日銀は物価の安定に責任を負っています。
これは、物価をフラットにすることではなく、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資するということです。
日銀が2013年に発表した政策目標は、「家計や企業等の様々な経済主体が物価水準の変動に煩わされることなく、消費や投資などの経済活動にかかる意思決定を行うことができる状況」にあることが物価が安定している状態だと定め、そのような状況を持続的に実現するために、消費物価の前年比上昇率2%という目標を掲げているのです。
アメリカの政策目標は物価と雇用に焦点を当てている
日本の政策目標は上記の通りですが、世界各国の政策目標はそれぞれ違います。
例えば、アメリカのFRBは、物価の成長と雇用の最大化の二つを政策目標に掲げています。
アメリカでは、雇用統計が為替市場に最も大きな影響を与えます。
雇用統計の指数で為替相場が大きく動くのは、投資家が紅葉統計をFRBが利上げや利下げを行うかどうかを判断しているからなのです。
アメリカにとって雇用統計とは、景気指数であり、実体経済が好調ならば雇用が生まれ、不調なら雇用が減ります。
特に、終身雇用の形態が少なく転職が多いアメリカ経済において、雇用統計が実体経済の動向を示す最も確かな指標なのです。
消費物価の緩やかな上昇は経済の好循環をもたらす
では、日本の政策目標が消費物価の前年比上昇率2%ということであれば、インフレを起こそうとしているわけです。
しかし、インフレには、良性のインフレと悪性のインフレがあります。
消費が拡大するインフレでなければ意味がない
消費者のモノやサービスの購入意欲が高まって消費が拡大することによって起こるのが良性のインフレです。
購入意欲が高まると買い手が多くなり、モノやサービスの生産量よりも買い手が増えれば値段は上がります。
しかし、悪性のインフレは、モノやサービスの原材料費や賃金などの生産費が高騰することによって起こるインフレです。
需要と供給のバランスではなく、ただ単純に生産費が上昇することでモノやサービスの値段が上がるだけで、企業の利益につながりません。
この悪性のインフレは、最悪の場合スタグフレーションにつながる危険なインフレなのです。
※インフレが起こった時は投資家としてどう行動するべきか『インフレの恐怖、国家は私たちを守れない』
インフレの効果は時間差で現れるので実感しにくい
デフレーションが起きる仕組みと原因『デフレは経済の縮小と不況を招く』でも述べましたが、良性のインフレを起こすことは、企業の業績も改善され、雇用の拡大や所得の上昇につながり、消費の増加につながります。
しかし、問題なのは、デフレの影響はすぐに現れますが、インフレの効果は時間差で現れることです。
良性のインフレには多くのメリットがありますが、それを実感するには多少の年月が必要なのです。
デフレマインドが根付いた日本では、例え良性のインフレが起こっていたとしても、賃金の上昇につながる前にモノやサービスの値段が上がる状況では不満が出てしまい、なかなかインフレを受け入れることができません。
特に、2011年頃の戦後史上最高値の円高時代に赤字を貯め込んでしまった企業が多い日本では、そう簡単にはインフレを受け入れることが難しいのが、国の経済運営においても非常にリスクになっています。
まとめ
- 中央銀行が行う金融政策は金利を操作すること
資金を供給や吸収するオペレーションを行い金利を操作する
景気の動向で資金を調整する - 物価の緩やかな上昇(安定)を目指す金融政策
アメリカの政策目標は物価と雇用に焦点を当てている - 消費物価の緩やかな上昇は経済の好循環をもたらす
消費が拡大するインフレでなければ意味がない
インフレの効果は時間差で現れるので実感しにくい