インフレが起こった時は投資家としてどう行動するべきか『インフレが起こった時の資産防衛』
前回はインフレの恐怖をお伝えしましたが、今回は実際にインフレが起こった時に私たちの資産を守るにはどうしたらいいのか?を考えましょう。
過度なインフレが起こってしまった場合、何もせず現金を持っていることが一番資産を失うということを理解してください。
正しい資産防衛を考えることが、私たちをインフレの恐怖から守ってくれるのですから。
インフレから資産を守る方法はとにかく現金を持つより投資をすること
インフレは物価が上昇することを言います。
物価が上昇するということはお金の価値が下がるということです。
低金利の時代でインフレが起こってしまうと、現金を置いておくことは資産の減少を意味します。
インフレ時代には、物価上昇に合わせて価格が上昇する商品に投資することが基本になります。
具体的には、不動産、株式、金(ゴールド)、外貨などが挙げられます。
インフレ時の資産防衛の代表格は不動産投資
実際に戦後日本のハイパーインフレの時代に、不動産投資で莫大な資産を築いた投資家が大勢いました。
その投資家たちはインフレによる土地の価格の高騰を事前に予測していたのです。
インフレを予想していた投資家たちは、戦後の焼け野原になった一等地を買い漁ったのです。
当時一等地を持っていた皇族などに、長期分割での土地売却を持ちかけ、持ちかけられた皇族達は、焼け野原になってしまった土地よりも現金の方が欲しかったのですぐに売り払ってしまいました。
長期分割で支払いをするので、実際に支払う現金よりインフレによる土地価格の高騰が上回ったため、土地を買い漁った投資家たちは、実質的にお金を貰って土地を手に入れたことになります。
これは実際にあったお話で、その投資家の代表格は日本の不動産王と呼ばれ、西武グループの基礎を気づいた堤康次郎さんです。
堤氏は、東京空襲で焼け野原になった一等地を買い漁って巨万の富を築き上げました。
今でも現役で残っている『プリンスホテル』がその土地の一つなのです。
私たちが現実的に不動産投資をできるのはREIT(不動産投資信託)
さて、戦後と現在とでは状況も全く違いますし、なによりインフレが起きたからといって実際の土地を買うほどの資産をすぐ用意できる人などそれほど多くはいないでしょう。
そして、80年代から90年にかけてのバブルを経験した人にとって、儲かった人もいるでしょうが大半の人は、不動産投資とは恐怖でしかないものだと思います。
しかし、インフレが進んだ場合は、借金をして土地を買った人が有利という図式は今も昔も変わりません。
そこでオススメできるのがREIT(不動産投資信託)です。
REIT(不動産投資信託)
投資信託の一種で、投資家から集めた資金で、オフィスビルや商業施設などの不動産を購入し、賃貸収入や売買益を分配する商品です。
一定の条件を満たせば証券取引所に上場することができ、一般的な株式と同様に自由に売買できます。
REITはインフレ対策だけでなく非常に優れた金融商品
REITは収益のほとんどを投資家に還元することが義務付けられており、インフレ対策はもちろん、金融商品として非常に優れたものです。
REITで構成された物件と同じポートフォリオを組もうと思っても、個人投資家にはほぼ不可能です。
また、プロのファンドマネージャーが運営していますので、分散投資はもちろんのこと、様々な分析をして収益を上げられるように投資してくれますので、安心です。
日本のREIT銘柄(ETF)
- NEXT FUNDS 東証REIT指数連動型上場投信 (1343)
- 上場インデックスファンド Jリート(東証REIT指数)隔月分配型 (1345)
- NZAM 上場投信 東証REIT指数 (1595)
- MAXIS Jリート上場投信 (1597)
インフレが起きた時に株式は一歩遅れて上昇する
インフレが起きた時に資産を守る方法は不動産投資ともう一つ、株式投資があります。
インフレ時の株式の動きはどうなるでしょう?
インフレが進行した場合、株式は基本的には物価の上昇に合わせて株価も上昇する傾向にあるので、激しいインフレの中であっても同様に、物価の上昇をカバーすることが可能です。
しかし、極度のインフレの進行が見られた場合、かなりの経済混乱も同時に発生している可能性が高いと予想します。
そうなってしまうと、株価が物価の上昇に合わせて素直に動いてくれず、一旦下落した後に上昇する可能性が高いです。
最終的にはインフレに追いつくにせよ、そこにはタイムラグが発生することになるわけです。
タイムラグ(一旦下落)が発生することは千載一遇のチャンス
これは不動産投資でも同じことが言えるのですが、このタイムラグの発生は十分注意する必要があります。
一方でこのタイムラグ(一旦下落)が発生した場合は、千載一遇のチャンスなのです。
経済混乱が発生し、他の投資家たちが保有株を慌てて手放してしまい、株価が大幅な下落を見せる場面が想定されるので、そこで一気に買いに走ること。
そして下落した後は、インフレ時に株価は物価の上昇に合わせて動きますので、より大きな利益を得ることが可能になります。
終戦後の日本の株価とドイツの株価はどう動いたのか?
太平洋戦争後の日本、第一次世界大戦後のドイツ、この二国は戦後にハイパーインフレを経験した国です。
実際にハイパーインフレが起きてしまった時、株価はどのように動いたのか?
終戦後の日本の株式市場は大きなタイムラグがあった
日本の株式市場は終戦の日を境に、GHQによる規制が入ってしまい、新しい組織である東証が取引を開始するまで4年間も再開できませんでした。
しかし現実には、市場外での相対の取引が行われており、店頭取引ではありますが、平均株価の算出も行われていました。
この時の平均株価は終戦から4年間に最大で7倍に上昇しました。
※日本のハイパーインフレ時には消費者物価は30倍に上昇したのですが、このデータには戦時中から続く価格統制によって不当に安く抑えられていた商品が含まれています。
しかし、この4年間の物価の動きと株価の動きには大きなタイムラグがありました。
戦後、物価がどんどん上昇していく中でも株価は同じ水準での取引が続き、時には大幅な下落の場面などもありました。
これには2つの原因がありました。
空襲などの影響を受けた企業が多かったこと
戦後ということもあり、多くの企業は空襲などで設備が破壊されたところがあり、業績の低迷が予想されていました。
修復しようにも極端な物資の不足でそれもままならなかったのです。
株式を持っていた投資家たちが売りに走ったこと
株式を持っていた多くの投資家たちが、戦後の混乱や日々の現金に窮してしまい、株式を手放す人が多くいました。
その後の株価の上昇を考えると非常にもったいないことなのですが、目先の生活を優先してしまったことや、インフレのメカニズムを理解できていなかったことは非常に悔やまれた結果になったと思います。
ドイツでも日本と同様の場面が見られました
日本と同じ現象は第一次世界後のドイツでも見られました。
ドイツの自動車メーカーのタイムダラーの株価の動きを見てみるとよく分かります。
ハイパーインフレ時にダイムダラーは暴落をした後それを上回る暴騰をした
自動車メーカーのダイムダラーはドイツを代表する企業でした。
ハイパーインフレで混乱しているといっても、フランス、イギリス、米国はいつも通り豊かな生活を満喫していましたので、それらの国には当然のようにダイムダラー社の自動車を欲しがります。
ましてや、ドイツの通貨は暴落しているのでなおさら売上は上がると予想されるはずでした。
しかし、ダイムダラーの株主の中には、市場の混乱と毎日の生活資金のためにタイムダラーの株を手放してしまう人が多かったのです。
このため、ダイムダラーはハイパーインフレであり、尚且つ売上も好調なのに株価は暴落してしまいます。
しかし、結局のところ同社の株価は、混乱も収まり投資家たちが大きく買い戻し、さらにハイパーインフレの影響で、最終的には大幅に暴騰したのです。
この時、底値でダイムダラーの株を買った投資家は、インフレが収束した頃には莫大な利益を得たのです。
ほかにも当時のドイツには破格の値段で放置されていた投資商品が多数存在していた
ダイムダラーと同じように、ドイツ国内の優良不動産なども、しばらくは破格の値段で放置されていました。
この間に、こうした投資商品を買うことができれば大きな利益を得られたわけです。
さらに戦後の日本とは違い、ドイツは為替取引も自由にできたので、それもタイムラグは小さいものの優良な投資対象になっていたのです。
まとめ
- インフレ時代には、物価上昇に合わせて価格が上昇する商品に投資する
- インフレ時の資産防衛の代表格は不動産投資(REIT)
- インフレが起きた時に市場はタイムラグが発生する
- タイムラグが発生した時は千載一遇のチャンス
大きなインフレの発生が予想された場合、まず為替でリスクヘッジ(ドル買い)し、不動産や株価などで割安なものを発見した場合は、そこに投資をする。
また、外貨建てでも日本株や日本のREITなどにも投資できますので、その方法ですとより多くの利益を得る可能性が高いです。