日経平均株価はGDP・物価(CPI)・日銀短観(景況DI)の指数で見通しを予想する

日経平均株価はGDP・物価(CPI)・日銀短観(景況DI)の指数で見通しを予想する

株価を予想するには景気を判断する必要があります。

では、株価に影響する景気を判断するには、どうすればよいのでしょうか?

それは、GDP(国内総生産)・物価(CPI)・日銀短観(景況DI)の指数を知る必要があるのです。

テレビのニュースや株式市場から流れてくる情報などで、言葉だけは聞いたこともある人が多いと思いますが、その内容やどれがどのようになれば、株価にどう影響するのかまで把握しなくては、株価の見通しを予想することはできません。

また、これらの指数は、景気をあらわす直接的な数値となりますので、株式市場だけでなく、私たちの生活にも影響します。

それでは、日経平均株価に最も影響する指数の概要や数値の読み方、判断の仕方などを見ていきましょう。

GDPは国全体の経済活動を示し株式市場で最も注目されている指標

経済や景気動向を読むのに重要な指標の一つに、GDP(国内総生産)があります。

GDPはGross Domestic Productの略で、国内で生産された財やサービスの付加価値額を合計した数値です。

GDPは国の経済活動の規模を示しているのです。

株式市場でGDPが注目されているのは、その国の経済状況が把握できるためで、経済指標の中でも最も重要な存在と言えます。

特に、日本の株式市場の売買代金のほとんどを占める外国人投資家にとって、GDPへの関心が高いとされています。

 

実質GDPの前期比を見て株価の動向を判断する

GDPの統計は、内閣府が四半期ごとに集計し、発表します。

GDPには、物価変動の影響を含めた名目GDPと、物価変動の影響を除いた実質GDPの2種類があり、株式市場で一般的に注目されているのは実質GDPの前期比の変化率です。

経済の成長率を示し、プラスであれば経済規模の拡大、マイナスならば縮小を意味します。

一般の生活者の実感に近いとされているのが名目GDPです。

日本は物価が下落する「デフレ」の状況に長くいたので、名目GDPは実質GDPより小さくなっていました。

外国人投資家は、GDP成長率の高い国に資金を厚く配分する傾向があり、成長率の低さは日本株の低迷の一因になります。

 

3つに分けられる需要の寄与度を見て景気の方向性を判断する

GDPは家計や企業の支出を示す「民間需要」、政府の投資や支出を示す「公的需要」、輸出から輸入を差し引いた「海外需要」の3つに大別されます。

これらの要因がどう成長率に影響したかを分析するのに役立つのが「寄与度です。

例えば、変動が大きかった、2009年10〜12月期を見てみると、実質GDPは+3.8%でした。

これを、寄与度で見ると

  • 民間需要:+1.3%
  • 公的需要:+0.3%
  • 海外需要:+2.2%

となり、景気回復は主に海外需要が牽引したことが分かります。

また、エコノミストなどが注目する指標が、消費の先行きを読む上で参考にできる、家計の収入を示した「雇用者報酬」も挙げられます。

上記の実質GDPでは、+3.8%でしたが、この時の雇用者報酬は0.4%減少しており、今後の消費に不安を残す結果となりました。

GDPは、関連統計からの推定値も多く、後になって大幅に修正されることが少なくないので、短期的な数値の増減よりも、景気の大きな方向性をつかむことが大切です。

 

物価の変動はお金の価値を変え株価にも私たちの生活にも関係する

私たちが暮らしに密着した重要な経済統計の代表が物価です。

物価は経済の体温計とも呼ばれるほど、身近なモノの価格から経済全体の変化が浮かび上がります。

物価は基本的にモノを求める需要と、それを提供する供給のバランスで決まります。

供給が一定であるとすれば、景気が良くなるとモノを買いたい人が増え、物価が上がる「インフレ」になり、逆に景気が悪くなると物価が下がる「デフレ」になります。

例えば、物価が下がると企業の売上高が減り、利益を確保するため、賃金や雇用をカットします。

モノよりお金の価値が高まるので、企業や個人が過去に抱えた借金の返済負担も増します。

そして、経済は停滞してしまうのです。

※関連記事:デフレーションが起きる仕組みと原因『デフレは経済の縮小と不況を招く』

 

消費者物価指数は物価を示す統計で財政政策の目標にもなっている

物価を示す統計には、総務省がまとめる、個人が購入するモノやサービスの価格を反映した消費者物価指数があります。

消費者物価指数は、Consumer Price Indexの略でCPIとも呼ばれ、毎月下旬に前月の全国のデータを公表します。

日本のCPIは、全体像を示す「総合」や天候や時期により変動が大きいデータが交じると基調を判断しにくいので「生鮮食品を除く総合」もよく用いられます。

日本ではこれを「コア指数」と呼びます。

米国などでは「食品(酒類を除く)とエネルギーを除く総合」を公表し、これをコア指数と呼んでいます。

米国型のコア指数は日本では「コアコア指数」と呼びますので、海外投資などをしている場合、注意して見ないといけません。

 

物価上昇率2%にするのが日本銀行の目標

短期的な変化を確認する場合は、大きなブレを除いた「生鮮食品を除く総合」を点検するのが分かりやすいです。

物価の安定を最大の目的とする日本銀行は、金融政策会合で「生鮮食品を除く総合」に注視しています。

長期的な傾向を確認する場合は、全体像を示す「総合的なCPI」を見ます。

日本銀行が物価の安定の目安・目標として掲げているのは、物価上昇率2%という数字で、これは、総合指数の前年同月比を対象としています。

物価上昇率の好ましい水準は、国により異なります。

インフレの懸念がなく失業率も低く、心地よい水準は先進国では2%ほどで、経済成長率が高い新興国であれば4〜5%が妥当な数字です。

新興国の場合は、物価以上に賃金が上がりやすいため、高めに設定されます。

 

日本は物価の下落(デフレ)に陥っていたため株価も低迷していた

欧米では緩やかな物価の上昇が続いていた中、日本は長い間物価が下落するデフレに陥っていました。

通常、デフレの場合は経済が成長しないため、株価は上昇しにくく、アベノミクスによるデフレ脱却の期待感が市場に広がるまでの間は、日経平均株価は低迷を続けていたのです。

逆に、インフレが進むと、中央銀行は金利を引き上げ、景気の過熱(バブル発生を抑えるため)を冷まそうと試みます。

※バブルの発生をなぜ抑えなければいけないのかは、バブルの発生と崩壊の仕組み『信用創造と信用収縮』をご覧ください。

金利を引き上げは一般的に株価にとってマイナス要因となりますが、実際に景気が好調であれば株価はその後上昇に転じることが多いのです。

 

 

日銀の短観(業況DI)で景気の動向をいち早く判断する

経済統計で速報性があり、いち早く株価を動かす指標が日銀短観(企業短期経済観測調査)です。

日銀が約1万社の企業にアンケートを実施し、景況感や収益見通し、設備投資などについて四半期ごとに調査したものが、日銀短観です。

その中でも、最も注目度が高いのが、業況判断DIです。

現状や先行きの景況感について答えてもらい、「良い」との回答から「悪い」との回答の割合を差し引いた数値です。

業況判断DIは、経営者の心理状況を映し出すため、企業収益相関が強く、DIは、製造業や非製造業の区分だけでなく、業種別にも公表され、株式投資の参考になります。

例えば、業種のDIが前回より上向きか下向きかを見ることで、業績の方向性を予測できます。

 

鉱工業生産指数を見て生産面での景気を判断する

生産面から見た景気動向を反映するのが、鉱工業生産指数です。

経済産業省が主要な鉱工業生産指数約500品目の月間生産数量を調べ、基準年を100として指数化しています。

速報値が翌月末には発表され、GDPと比べ速報性が高いのが特徴です。

基本的には、生産指数が前月比で上向きか下向きかを判断することが重要ですが、水準にも目配りする必要があります

足元の指数は1年前に比べて30%上昇したとしても、水準を見るとそれ以前の年と比べて、20%下落していたりすることもあります。

 

 

機械受注の3か月平均を見て設備投資の増減を判断する

設備投資の先行きを予測する材料となるのが機械受注です。

内閣府が主要な機械メーカー約300社に対し、月次受注額を調査した数値で、設備投資に半年程度先行するとされています。

機械受注の特徴は単月の数値が大きく振れやすいことです。

前月比の増減率だけでなく、3か月移動平均などを用いて基調が上向きか下向きかを判断する必要があります。

 

景気ウォッチャー調査は直接的な景気判断を知ることができる

ここ数年で注目度が高まっているのが、景気ウォッチャー調査です。

内閣府2000年から実施している景気動向調査で、タクシーの運転手や小売店店長、娯楽施設の従業員などを対象に景気ウオッチャーとして協力してもらい、肌で感じる景気感を地域ごとに調査します。

現在の景気や将来の景気について5段階評価で採点してもらい、景気の判断指数を指数化します。

これが、50以上なら景気の現状・見通しが良く、50以下なら悪いと判断します。

毎月25日〜月末にかけて現況を聞き、翌月10日ごろに発表します。

速報性に優れていおり、株価に対して先行性があります。

日銀短観と同様に、景気の現状判断DIを算出しており、各地域の景気ウオッチャーのコメントも重要な要素になります。

 

米雇用統計は米国の景気を判断する重要な指標

海外の経済指標で最も注目度が高いのが、米雇用統計です。

米国では、景気が悪くなるとすぐに人員を減らす傾向があり、失業率や非農業部門の雇用者数の増減は、米国の景気の動向を端的に示します

米雇用統計が悪いと、日本の輸出業が売られやすく、日経平均株価も下げることが多くなります。

主な経済指標は、証券会社などが予想を公表しており、その予想の平均値(コンセンサス)と比べた結果に反応することが多いため、市場で予想されている数値を確認しておく必要があります。

 

まとめ

  • GDPは国全体の経済活動を示し株式市場で最も注目されている指標
    実質GDPの前期比を見て株価の動向を判断する
    3つに分けられる需要の寄与度を見て景気の方向性を判断する
  • 物価の変動はお金の価値を変え株価にも私たちの生活にも関係する
    消費者物価指数は物価を示す統計で財政政策の目標にもなっている
    物価上昇率2%にするのが日本銀行の目標
    日本は物価の下落(デフレ)に陥っていたため株価も低迷していた
  • 日銀の短観(業況DI)で景気の動向をいち早く判断する
    鉱工業生産指数を見て生産面での景気を判断する
    機械受注の3か月平均を見て設備投資の増減を判断する
    景気ウォッチャー調査は直接的な景気判断を知ることができる
    米雇用統計は米国の景気を判断する重要な指標

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