バブルの発生と崩壊の仕組み『信用創造と信用収縮』
以前ご紹介したバブルが起きるのはなぜか?バブルとは何か?の内容をもう少し深く掘り下げて考えてみます。
バブルとは、その名の通り『泡』です。
その泡は、信用創造と信用収縮を繰り返しながら、10年から20年のサイクルで世界中に起こっては消えていきます。
そこで今回は、信用創造と信用収縮で起こるバブルの発生と崩壊の仕組みを考えていきます。
信用創造がバブルを発生させる仕組みを生み出す
前回の金融リスク(危機)の原因は銀行にある?銀行がお金を稼ぐ仕組みでもお伝えした通り、銀行は私達から預金としてお金を集め、その預金の一部を日本銀行(中央銀行)に預ければ、残りの資金を貸し付けに充てることができます。
銀行はビジネスを成り立たせるために、リスクが低ければ融資を繰り返し続け、その融資したお金から新たに預金が生まれますので、銀行の預金残高はどんどん増えていきます。
これが、信用創造と呼ばれる現象で、社会全体の中でお金の量を増やし、経済を発展させていきます。
住宅ローンは不動産価格を高騰させる信用創造が仕組み化されている
例えば、家を買うのに銀行からお金を借りた場合、現資産は住宅ローンの頭金だけで、残りは信用を担保にお金が膨れ上がります。
そして、その住宅ローン債権が市場で売買され、「住宅ローン債権担保証券」という金融商品として現資産から膨れ上がった実体のないお金がどんどん生まれていくのです。
フラット35は信用創造の典型的な例
住宅ローンによる信用創造の典型的な例は、民間金融機関と住宅金融支援機講が提携して販売している、長期固定金利ローン『フラット35』なのです。
民間金融機関などが融資した住宅ローン債権を住宅金融支援機構が買い取り、住宅ローンを担保にした住宅ローン債権担保証券を発行し、生保・損保会社や銀行、年金基金などの大口投資家に高利回りの金融商品として販売しています。
すなわち、私たちが住宅をローンで購入すると、そのローンの返済は単純な銀行と私たちのやりとりではなく、その返済を受け取れる権利として市場で売買されているのです。
レバレッジを効かせた信用取引は株式や為替の信用創造
現金や株式を保証金として証券会社に預け、その何倍もの金額の株式を取引する信用取引も、信用創造と言えます。
これにより、信用を担保にして社会に流通するお金の量を増やしていることになります。
このように信用取引を含めた取引総額が、実際に持っている自己資金の何倍であるかという数値をレバレッジ倍率と呼びます。
株式取引やFXで、投資家が自己資金100万円を担保に、10倍のレバレッジをかけて信用取引を行えば、市場には1000万円があるように見えるのです。
いわば、1000万円のうち900万円は信用創造されたわけです。
信用取引で増えたお金は一気に消えてしまう
信用取引で増えたお金は消える時もあっとゆう間に消えてしまいます。
例えば、上記のように100万円を担保に10倍のレバレッジをかけたとします。
すると、株価が10%下落すると本来ならば10万円の含み損のはずが、10倍の100万円の含み損が出てしまいます。
そのような場合、信用取引をしている金額に対して最低限の担保を維持することが義務(最低保証金維持率)付けられていますので、不足分の追証金(追加保証金)を期日までに入金しなければいけません。
この追証金を入金できなければ、証券会社が強制的に決済を行い資金を回収するため、市場から1000万円が一気に消えてしまうのです。
信用収縮がバブルを崩壊させる仕組み
現在の世界では、複雑な仕組みで高いレバレッジをかけ、リスクを回避したりハイリターンを狙う金融派生商品(デリバティブ)などにより、中央銀行が発行する実体資金(実在するお金)の約60倍にまで信用創造によるお金の量が膨れ上がっています。
金融危機などにより株式や債券の価格が暴落すると膨れ上がったお金が一気に消える
金融派生商品(デリバティブ)は、株式・債券・外国為替・預貯金・ローンなど、様々な金融商品が複雑に組み合わせられています。
そのため、株価や債券価格の暴落や金融危機などが起きると、それぞれの金融商品や金融派生商品から大きく膨らんだ、信用創造によるお金が一気に市場から消えてしまいます。
これは、信用収縮という現象です。
金融市場にお金が不足すると銀行から企業に収益悪化が伝染しバブルが崩壊する
信用収縮が進むと、お金を貸してくれる人がいなくなり、金融市場に供給されるお金が不足する状態になります。
お金の貸し手がいなければ、借り手ばかりになって金利が上がり、お金が借りづらくなります。
信用収縮が起きると、銀行はそのショックに耐えるために貸し剝がしを頻繁に行うようになります。
こうなると、銀行から融資を受けている企業は運転資金が不足し、商品・サービスの決済代金や月々の経費の支払いなども払えなくなり、資金がショート(お金が借りられないので)した時点で倒産します。
融資先の企業が倒産すると、銀行を中心とする投資先が保有している債権が回収困難になり、不良債権化し、自社の資本に大きく傷がつきます。
そのような状態に陥った銀行や投資家の数が一気に増えると、その傷ついた資本を回復させようと、担保に取っていた商品や不動産や株式などを売却するため売り注文が殺到します。
それにより、株価や不動産価格が大きく下落するというのが、バブル崩壊の仕組みです。
バブルが発生しようが崩壊しようが実体の数は変わらない
バブルとは、株価や不動産価格が、国や企業などの経済の状況を反映した価格から大きく乖離し、泡のようにどんどん膨らむことです。
この泡は、信用創造により元々なかったものをあるかのように感じてしまうことなのです。
とある企業の株式100株はバブルで値段が跳ね上がっても、崩壊して10分の1になっても、100株であることに変わりはありません。
同じく、100坪の土地も、バブルが起こっていても崩壊しても、100坪の土地です。
実体としてはあり得なかったお金が消失してしまうことで、総資金量が減少し、資産の評価額が下がることがバブル崩壊なのです。
まとめ
- 信用創造がバブルを発生させる仕組みを生み出す
住宅ローンは不動産価格を高騰させる信用創造が仕組み化されている
フラット35は信用創造の典型的な例
レバレッジを効かせた信用取引は株式や為替の信用創造
信用取引で増えたお金は一気に消えてしまう - 信用収縮がバブルを崩壊させる仕組み
金融危機などにより株式や債券の価格が暴落すると膨れ上がったお金が一気に消える
金融市場にお金が不足すると銀行から企業に収益悪化が伝染しバブルが崩壊する - バブルが発生しようが崩壊しようが実体の数は変わらない