『バブルの歴史から予想する』ロボット・人工知能(AI)は次なるテクノロジーバブルを発生させるのか?
前回ご紹介したイノベーションはバブルを起こす『バブルの歴史、鉄道バブルと自動車バブル』、その次に起こったITバブル、これらの、新しいテクノロジーをきっかけにしたバブルには、株価上昇期間に関する共通点があります。
バブルの歴史を振り返り、考えることで、今後の未来に起こるであろう、新しいテクノロジーをきっかけにしたバブルに備え、より適切な投資をするにはどうすればよいかを予想することができます。
テクノロジーバブルは長期の株価上昇トレンドを形成すること、テクノロジーバブルは新しい産業の基幹インフラになることなどを踏まえて、今後、どのような分野がテクノロジーバブルの対象となるのかを予測してみます。
テクノロジーバブルは長期の株価上昇トレンドを形成する
鉄道バブル、自動車バブル、ITバブルなど、世界経済の歴史の中で、新しいテクノロジーをきっかけにした大きなバブルには、長期の株価上昇トレンドを形成する共通点があります。
80年代後半の日本経済のバブル、米国の不動産バブル、現在ピークを迎えている中国経済バブルなどの、マクロ的な要因で起こったバブルのように、一時的な株価上昇が起こるパターンとは違う点が、テクノロジーバブルには見られるのです。
過去に起こったテクノロジーバブルは15年〜20年株価上昇が続いた
過去に起こったテクノロジーバブルの株価上昇トレンドを見てみると、英国で起こった鉄道バブルは、株価がピークを付けるまでの期間は約15年、日本の鉄道バブルも約15年続きました。
次に起こった、米国の自動車バブルは約20年、日本の自動車バブルも約20年、株価上昇期間があります。
このことから分かるように、本格的なテクノロジーバブルになった場合には、株価上昇期間は15年〜20年続く長期の上昇トレンドを形成しているのです。
ソニーの株価推移
※上記の画像は1983年からのソニーの株価推移です。
※Yahooファイナンス参照
ソニー2000年前後のITバブル時には、ソニーがネット銘柄の代表という位置付けになり、株価が高騰しました。
急激な株価上昇は、ピーク前の1〜2年ですが、より長期で考えると、1985年頃から上昇トレンドが続いていたことがわかります。
テクノロジーバブルは新しい産業の基幹インフラになる
鉄道、自動車、IT、全てが15年〜20年の長期にわたってバブル的な株価を形成した分野ですが、最終的には、単なるバブルではなく、産業の基幹インフラになっています。
確かに一時的なバブル的な株価となったわけですが、バブル崩壊後も産業の基本インフラとして定着し、長い期間で見てみると、当時のバブル的な株価を上回る水準で、株価が推移している企業もあります。
鉄道、自動車、IT、全てがまだまだ発展の余地がある
鉄道は、本格的な普及から200年近くの時間経っていますが、現在も人々の生活に無くてはならないものですし、リニアの開発など、まだまだ発展の余地を残すほどの重要な産業になっています。
自動車は当初、現在の価格で数千万円もする高級品でしたが、驚異的な普及を見せ、大量生産が可能になり、価格が劇的に低下しました。
それでも1台100万以上するのですが、冷静に考えると、単価が100万円以上の商品が次々に売れる産業など自動車以外にはありません。
その点では、自動車は20世紀最大の発明品と言えるでしょう。
IT企業の株価は異常と言われたが現在では適正な株価水準になった
ITバブル当時、ブームに乗って無理な資金調達をする会社が相次ぎました。
中には破綻する会社もあるほどで、IT企業の株価は異常と言われ、大きな懸念材料と唱える人が大勢いました。
それでもIT企業の通信会社は、高い株価を背景に大量の資金調達を行い、インターネット通信網を整備していき、当時はこうした通信会社の設備投資は無謀と言われましたが、現在では当時整備された通信網の規模ではまったく容量が足りない状態まで成長しています。
直近のITバブルでも、新しいテクノロジーが完全に普及すればバブルはバブルでなくなるのです。
イノベーションを材料とした、新しいテクノロジーがバブルを起こしてしまったとしても、その技術が完全に普及すれば、バブル時の株価も、長いスパンで見れば十分に適正価格であったと言えます。
KDDIの株価推移
※上記の画像は1993年頃からのKDDIの株価推移です。
※Yahooファイナンス参照
KDDIの株価推移を見てみると、ITバブル前は少し不安定な動きを見せていますが、1999年頃に一時的なピークを迎えてバブル崩壊後は暴落しましたが、現在ではITバブルのピーク時を上回る株価を達成しています。
技術革命だと言われた電卓バブルはあっけなく終わった
バブルの歴史の中でも、新しいテクノロジーで将来を有望視されたにも関わらず、あっけなく終わってしまったバブルもあります。
その例が、1960年代に起こった電卓バブルです。
当時、電卓は数十社が開発競争を繰り広げるほどの技術革命で、電卓は半導体技術の結晶と言われ、激しい開発競争が行われていました。
ピーク時には数十社が電卓市場に参入し、あまりにも競争が激しかったことから、電卓戦争と呼ばれていたほどです。
現在では考えられませんが、1960年代の電卓は、本当に画期的な発明で、大きさもスーパーなどで見かけるレジほどで、価格は定価で50万円を超えるものでした。
電卓戦争の主役は『シャープ』
※参照サイトパソコンの歴史1947~79年
こちらが、シャープ社が開発した、電子式卓上計算機「CS10Aコンペット」で、この電卓は爆発的に売れ、今のシャープの電子事業の基礎を築きました。
シャープは今でこそ、液晶デバイスを製造する設備投資型の半導体メーカーですが、もともとは独自性の高い製品を開発するアイデア重視型のメーカーでした。
電卓は儲かるビジネスにはならずシャープの株価は電卓バブル崩壊で50%下落する
その後電卓は、あまりにも多くの企業が参入したことから、予想以上に小型化と低価格化が進んでしまいます。
最終的にカシオとシャープが電卓戦争に勝利したのですが、小型化と低価格化は止まらず、電卓は差別化のできない商品になってしまい、儲かるビジネスにはなりませんでした。
シャープは電卓の大ヒットを受けて、1965年に35円前後だった株価は5年で14倍急騰し、500円を突破します。
しかし、ピークから2年後の1972年には200円台まで下がってしまい、その後、しばらくの間は目立った上昇はありませんでした。
電卓も、本格的な普及が実現し、新しいテクノロジーと言えますが、あまりにも競争力がなくなってしまい、数年で電卓バブルは終わってしまったのです。
テクノロジーバブルは新しい産業の基幹インフラになることが発生条件
15〜20年に渡る、長期の株価上昇トレンドを形成し、一時的なバブル的株価をつけてしまっても、その株価が適正価格だと言えるほどの本物のバブルとなり得る分野は、必ず後に産業の基幹インフラになっています。
個別の技術が優れていることは重要ですが、それ以上に、産業の仕組みを根本的に変えるポテンシャルを持つ分野であることが重要です。
それと、人々から見て、理解しやすくシンプルであることも大切な要素と言えます。
鉄道、自動車、IT(インターネット)は投資に関係ない人でも理解できる
鉄道、自動車、IT(インターネット)は、消費者向けの製品やサービスであり、専門知識や投資家ではない一般の人々にも理解しやすい産業であると言えます。
ITは少し複雑で難しい印象はありますが、それをパソコンやスマートフォンなどの消費者向けの製品を通じて理解しやすく拡大させることが可能でした。
そのことから、何らかの形で最終製品と一般の人々とが関連していることが重要だと考えられます。
電気自動車、風力・太陽光発電は新しいテクノロジーにはならない
バブルからインフラに定着するような、新しいテクノロジーの産業は、いくつか挙げられます。
しかし、その中には、インフラに定着したとしても、バブル的な株価の上昇は起こらないと考えられる産業があります。
代表的な産業は、電気自動車、風力・太陽光発電などです。
電気自動車はガソリン自動車の派生でしかない
電気自動車が、新たなテクノロジーバブルを発生させると、予想する投資家の方々はたくさんいます。
しかし、電気自動車は新しいテクノロジーではなく、従来のガソリン自動車の派生品でしかないと考えられます。
もし仮に、電気自動車がガソリン自動車を上回るほど普及した場合、どこかで大規模な電気自動車の企業が新たに誕生し、トヨタやゼネラルモーターズが参入しないとすれば、従来の自動車企業から利益を奪う形になりますので、とてつもないバブル的株価が発生するでしょう。
ですが、電気自動車が本格的に普及するとなれば、高確率で従来の自動車企業が参入してきますので、バブル的な株価上昇は見込めないと予想できます。
テスラモーターズの株価推移
※参照Yahooファイナンス
あえて、電気自動車の企業の中で、バブル的な株価上昇が見込める銘柄を挙げると、電気自動車トップの『テスラモーターズ』です。
上記のチャートは、テスラモーターズの株価ですが、2013年頃から急激に株価が上昇していますので、今後これ以上の上昇が見込める可能性は低いと考えられます。
風力発電や太陽光発電などの再生エネルギーも従来の発電の派生でしかない
風力発電や太陽光発電などの再生エネルギーも、新しいテクノロジーとして注目されていますが、これらも電気自動車と同じく、従来の火力発電や原子力発電の置き換えにすぎないと考えられます。
また、ゼネラル・エレクトリックやシーメンスなどの火力・原子力発電に強い大企業が、再生エネルギーの分野に参入してくる可能性が高く、これらの企業の株価はすでに高い水準に達していますので、バブル的な株価上昇は見込めないと考えられます。
ロボットと人工知能の産業が次のテクノロジーバブルの大本命
人工知能とは、自分で考えて成長する(人間の知能を持っている)コンピューターで、AIと呼ばれています。
人工知能はロボットに搭載されるので、ロボットと人工知能は一体の技術となる可能性が高いです。
ロボットと人工知能分野はIT分野の延長ではなく生活を根本的に変える力がある
電気自動車や再生エネルギー分野と同じように、ロボットと人工知能の分野も、単なるIT分野の派生と考える人がいますが、これは正解であり間違いと言えます。
曖昧な回答なのですが、確かにロボットと人工知能は、IT分野とは切っても切れない関係にあるからです。
それだけでなく、IT分野は、自動車や鉄道なども含め、すべての産業・分野と関係がある分野と言っても過言ではありません。
ですので、IT分野と関係のない産業・分野は存在しないと考え、ロボットと人工知能分野は、単なるIT分野の延長とは言えません。
ロボット技術の本当に画期的なところは、人の形をしていることや、人間と会話できることではありません。
ロボットと人工知能分野がテクノロジーバブルを起こす可能性が高い理由は、クラウド上にある人工知能と連動することで、人間の生活や産業基盤を根本的に変えるところにあります。
ソフトバンクが商品化した人型ロボット『Pepper(ペッパー)』の可能性
ロボットというと、ソフトバンクが商品化に成功した人型ロボット『Pepper(ペッパー)』が有名です。
※画像は『Pepper(ペッパー)』と孫正義さん
※本体価格198,000円(税抜き)
※詳細はロボット | ソフトバンクのページで
Pepper(ペッパー)のようなロボットが家庭に入ってくると、将来的にそのロボットは、家庭にある家電製品やPC、自動車に搭載されたコンピューターなどと連動し、これらのデバイスを統括してコントロールするようになります。
ロボットに人工知能が加わると状況が大きく変わる
人工知能には、機械学習と呼ばれる機能が搭載されており、コンピューターが人間と同じように、自主的に学習できるようになっています。
これが途方もないインパクトを人間社会にもたらすことになります。
ロボットに人工知能が加わると思い通りに気の利く人間を作り出すことができる
人工知能を搭載したロボットは、利用者と対話しながら、様々なことを学んでいきます。
仕事の日は朝何時に起きる、好きな食べ物、冷蔵庫の中身、声や体温などを分析した体調、誰とどんな内容の電話やメールをしたか、人間の日常生活すべてを完璧に把握することできたりします。
そして、様々なことを学んだロボットは、利用者の思いを先に把握し、何も言わずに最高のおもてなしを行えるように成長するのです。
専門知識のある仕事を受け持つ人間を作り出すことができる
普段の私生活だけではなく、様々な職場にも影響を与えます。
人工知能を持ったロボットが職場に入ってくると、優秀な人間や専門知識を持った人間になることも可能です。
例えば、パイロットや天才プログラマー、トラックやタクシーの運転手など、技能を必要とする職業もいずれロボットに取って代わることも考えられます。
ロボット・人工知能の関連企業(銘柄)『大手企業』
- IBM
- Oracle
- Apple
- Microsoft
- Yahoo
- ソフトバンク
このあたりの大手企業は、すでに株価は高水準にありますので、バブル的な株価上昇はあまり期待できないと考えられます。
注目するべき日本のロボット・人工知能の関連企業(銘柄)
大手企業ではなく、まだまだ発展、株価上昇の余地のある、日本のロボット・人工知能の関連企業をご紹介します。
※株価上昇の余地はありますが、企業規模が比較的小さいため、リスクは大きくなります
UBIC(2158)
- 企業情報:法的紛争、訴訟の際、証拠保全など電子データ収集、分析行うコンピュータ解析事業
- 業種分類:サービス業
- 上場市場:マザーズ
ユニリタ(3800)
- 企業情報:ソフト開発の独立ベンダー。基幹業務(メインフレーム系)から分散処理(オープン系)に注力
- 業種分類:情報・通信
- 上場市場:東証JASDAQスタンダード
フォーカスシステムズ(4662)
- 企業情報:通信分野でのオンラインソフト開発に強い。保守・運用サービスも。独自の暗号システムに進出
- 業種分類:情報・通信
- 上場市場:東証2部
テクノスジャパン(3666)
- 企業情報:ITコンサル。SAP中心にERPソフトを導入支援。ビッグデータ解析、製品化進める
- 業種分類:情報・通信
- 上場市場:東証2部
データセクション(3905)
- 企業情報:ビッグデータ処理・解析。特にSNS等ソーシャルメディアに強み。データ活用システムも開発
- 業種分類:情報・通信
- 上場市場:マザーズ
インテージホールディングス(4326)
- 企業情報:日本で唯一、消費、販売の両パネル調査網持つ。市場調査分野で国内首位、13年10月持株会社に
- 業種分類:情報・通信
- 上場市場:東証1部
まとめ
- テクノロジーバブルは長期の株価上昇トレンドを形成する
過去に起こったテクノロジーバブルは15年〜20年株価上昇が続いた - テクノロジーバブルは新しい産業の基幹インフラになる
鉄道、自動車、IT、全てがまだまだ発展の余地がある
IT企業の株価は異常と言われたが現在では適正な株価水準になった - 技術革命だと言われた電卓バブルはあっけなく終わった
電卓戦争の主役は『シャープ』
電卓は儲かるビジネスにはならずシャープの株価は電卓バブル崩壊で50%下落する - テクノロジーバブルは新しい産業の基幹インフラになることが発生条件
鉄道、自動車、IT(インターネット)は投資に関係ない人でも理解できる - 電気自動車、風力・太陽光発電は新しいテクノロジーにはならない
電気自動車はガソリン自動車の派生でしかない
風力発電や太陽光発電などの再生エネルギーも従来の発電の派生でしかない - ロボットと人工知能の産業が次のテクノロジーバブルの大本命
ロボットと人工知能分野はIT分野の延長ではなく生活を根本的に変える力がある
ソフトバンクが商品化した人型ロボット『Pepper(ペッパー)』の可能性
ロボットに人工知能が加わると状況が大きく変わる
ロボットに人工知能が加わると思い通りに気の利く人間を作り出すことができる
専門知識のある仕事を受け持つ人間を作り出すことができる