日本国債への投資が安全とは言えない『GPIFも日本国債の比率を下げた』
日本国債は本当に安全な投資先なのでしょうか?
確かに、日本国債や日本円は、世界中の投資家や様々な金融機関から安全な資産として信頼を得ているのは、市場の動向を見ていても明らかです。
しかし、安全な資産だからといって、それに重点を置き過ぎることは、本当の意味で安全だとは言えません。
本当の意味での、安全で安定的な資産運用とは、現状維持ではなく市場の動向やインフレの動向などに合わせた上昇(利益)だと考えます。
そこで今回は、GPIFのポートフォリオの見直しと日本国債への投資の危険性を見ていきましょう。
GPIFは安全運転的な運用を重んじるあまりローリスク・ローリターンになりがち
日本の公的年金を運用しているGPIFは、ポートフォリオ理論(分散投資)に基づいて運用しています。
米国や欧州など、世界の主要年金基金と比べてもそこまで差異はありません。
しかし、そのポートフォリオの中身や運用方針は、世界レベルで見ると保守的で世界の潮流からすれば、少し時代遅れと言えます。
GPIFの運用は、ローリスク・ローリターンを志向して、その結果として得られる運用収益が少なく、老後に給付される年金は必要な額まではなかなか届かないのです。
この安全運転的な運用が、老後の生活の必要資金と実際の給付金の差を生んでおり、年金が必要な額に届かないということは、これは本当に安全で安定的な投資とは言えません。
それを分かった上で国民一人一人の老後は、自分で守るように私的年金や投資による資産運用で、老後の資金を作る必要があります。
日本は米国・欧州に比べて債券偏向のポートフォリオを組んでいる
GPIFのポートフォリオを他の国の公的年金と比べてみると、日本は債券の比率がとても多いです。
逆に、株式や不動産といったハイリスク・ハイリターンの比率はとても少ないのです。
GPIFは、資金が国民の年金のため、運用に失敗が許されないことからローリスク・ローリターンになりがちです。
世界で見ると、日本よりポートフォリオの債券の比率が多い国は、ハンガリー、トルコ、韓国、メキシコだけで、米国や欧州の主要先進国は、日本ほど債券偏向の公的年金運用を行なっている国はありません。
2014年からGPIFのポートフォリオが見直された
2014年から、GPIFの運用方法が変更され、債券偏向のポートフォリオから株式比率を増やすことが決定されました。
3つの観点を組み合わせ安定的な収益を上げる『GPIFから学ぶ投資法』の中でも述べましたが、GPIFのポートフォリオ(2015年12月末)を平均すると
- 国内債券:37.76%
- 国内株式:23.35%
- 外国債券:13.50%
- 外国株式:22.82%
- 短期資産:2.57%
このポートフォリオを見ると、安全性・流動性・収益性の観点は素晴らしいものの、他の世界の年金基金と比べると、安全性を重んじるあまり、国内債券の比率が高くてまだまだ分散が十分でないとも考えられますが、2014年の改定後は、非常に改善されました。
数年前のポートフォリオと比べると劇的に運用が見直されている
上記でも、他の世界の年金基金と比べると国内債券の比率が高いと述べましたが、数年前のGPIFのポートフォリオと比べてみると、2014年に見直されたポートフォリオがどれだけ改善されたかよくわかります。
- 国内債券:67.0%
- 国内株式:11.0%
- 外国債券:8.0%
- 外国株式:9.0%
- 短期資産:5.0%
運用が見直された最大の理由は年金制度を維持するため
日本の年金財政は、少子化と高齢化により、現在も未来も悪化をたどると予想されており、持続不可能であることは誰が見ても明らかです。
このままでは、年金をカットするか、支給開始年齢を遅らせるか、GPIFの運用利回りを上げるかしか方法はありません。
年金カット・支給開始年齢を遅らせることは、国民の反発が最も大きいため、運用利回りを上げる方法を取るしかないわけです。
運用利回りを上げるには、利回りがほぼゼロ(マイナス金利を拡大すれば最悪マイナス)の日本国債の比率を下げ、高い利回りが見込める、国内株式・外国株式・外国債券の比率を上げたのです。
欧米主要国の公的年金は最大のリターンを上げるために株式投資に重点を置いている
欧米主要国においての公的年金は、失敗が許されない年金の資金の制約の中で、最大のリターンを上げるために様々な工夫をしています。
その中でも、GPIFとの最大の違いは債券比率と株式比率です。
- CalPERS(アメリカ):債券19%、株式61%、その他の資産20%
- CPPIB(カナダ):債券35%、株式65%
- GPF-G(ノルウェー):債券35%、不動産5%、株式60%
- GPIF(日本):債券50%、株式50%
これを見れば、2014年に運用を見直してもなお、債券比率が高いことと株式比率が低いことがわかります。
欧米主要国の公的年金はGPIFと比べるとハイリスク・ハイリターンだが長期で見ると安定して高い利回り
上記のグラフを見てみると、GPIF(日本)と比べ変動が大きく、ハイリスク・ハイリターンであるように見え、危険が伴うのだと思いますが、長期的に平均すると、トータル的に日本よりもリターンが大きいことがわかります。
GPIFほど規模が大きい機関が国債を大量に売却すると金利急騰のリスクもある
ここまでは、GPIFのポートフォリオの国債の比率を下げ株式比率を上げることが、大きな利回りを生むことを述べましたが、国債の比率を下げることで生まれるハイリスク・ハイリターンの他に、もう一つの不安材料があります。
それは、国債価格の暴落による日本の長期金利の急騰です。
ポートフォリオの見直しは日本国債40兆円の売却
GPIFがポートフォリオの見直しを行い、国債の比率を67%から37%へ下げたということは、単純に計算して40兆円分の国債が売却されたことになります。
現在は、日銀による異次元の金融緩和(国債購入)が行われているため、国債価格暴落・長期金利急騰のリスクは低いですが、金融緩和が終了した時と限界に達した時、日本国債がどうなるかは誰にも予想できません。
今でも日本国債については両極端の意見が飛び交い、「日本国債の買い手は日本であり、自国が自国による借金で崩壊することはない」と唱える経済学者やエコノミストもいる一方、カイル・バスから学ぶ投資の心得『日本国債暴落に賭ける投資家』のような、「対GDP比率200%も超えるような世界最大の借金国がいつまでも続くわけがない」と唱える人も多くいることに間違いはありません。
日本国債が暴落するかはわからないが国債市場はバブル状態
日本国債については様々な意見がありますが、対GDP比で200%を超えている国の長期金利が、マイナス金利であることは異常事態であること、日本国債の市場は何年も前からバブル状態であることは明確です。
それでもなお、日本国債の価格は史上最高値を更新し続けています。
個人投資家は日本国債をポートフォリオには含めないことをお勧め
私たち個人投資家がポートフォリオを考えた時、ハイリスク・ローリターンとなってしまっている個人向け国債や日本債券ファンドなどへは投資しないことが一番の安全策ではないかと考えます。
また、日本が目指しているデフレ脱却や、先進国を中心に世界中が目指しているインフレ対策を考えると、資産を現金で保有しているよりも、資産運用でハイリスク・ハイリターンと考えられていた株式投資や外国債券への投資が、結果的に一番の安全な投資法である時代なのかもしれません。
- インフレが起こった時は投資家としてどう行動するべきか『今後円安に進む可能性が非常に高い』
- インフレが起こった時は投資家としてどう行動するべきか『インフレの恐怖、国家は私たちを守れない』
- インフレが起こった時は投資家としてどう行動するべきか『インフレが起こった時の資産防衛』
上記はインフレ時の資産防衛の記事です。
まとめ
- GPIFは安全運転的な運用を重んじるあまりローリスク・ローリターンになりがち
日本は米国・欧州に比べて債券偏向のポートフォリオを組んでいる - 2014年からGPIFのポートフォリオが見直された
数年前のポートフォリオと比べると劇的に運用が見直されている
運用が見直された最大の理由は年金制度を維持するため - 欧米主要国の公的年金は最大のリターンを上げるために株式投資に重点を置いている
欧米主要国の公的年金はGPIFと比べるとハイリスク・ハイリターンだが長期で見ると安定して高い利回り - GPIFほど規模が大きい機関が国債を大量に売却すると金利急騰のリスクもある
ポートフォリオの見直しは日本国債40兆円の売却
日本国債が暴落するかはわからないが国債市場はバブル状態
個人投資家は日本国債をポートフォリオには含めないことをお勧め