ダニエル・ローブから学ぶ投資の心得『日本株買い』
米国を代表する物言う株主。
1995年にサード・ポーイントを創業。
強面で知られ、2012年には投資先ヤフーのCEO更送を主導。
アベノミクスによる日本の変化を期待し、ソニーやソフトバンク、IHIにも投資している。
運用資産は約140億ドルに達する。
ダニエル・ローブが公表したソニーへの大型投資
ダニエル・ローブは140億ドルという巨額の資金を運用するファンド業界の旗手であり、経営陣に改革を突きつける物言う株主の顔を持ちます。
ダニエル・ローブが触手を伸ばしたというニュースだけで、投資先の企業の株価は大きく上がるほどで、市場に与える影響力は誰もが認めています。
2013年に開催された会合で、壇上に上がったダニエル・ローブはこう言い放ちました。
「日本株の上げ相場にはまだまだ先がある」
「安倍政権が主導権を握り、日本の構造改革にも進展が見られる」
日銀は未曾有の金融緩和に踏み切り、これからも円相場は水準を切り下げ、円安と株高にかける投資戦略は今後も有効だと力説しました。
会合を終えた後、間を置かずに海外に飛び立ちました。向かった先は東京です。
そこで見せた、世界中が驚く新たな投資アイデアが、日本を代表するグローバル企業、ソニーへの大型投資でした。
ソニーにも物言う株主のスタンス変わらない
ダニエル・ローブは、ソニーのCEOである平井一夫に、映画・音楽などエンターテインメント部門の高い価値が、不振のエレクトロニクス事業に埋もれたままだと訴えました。
そして、エンタメ部門の一部上場を柱とした経営の改善策を盛り込んだ書簡を手渡した。
エンタメ部門の子会社株の15〜20%をソニーの既存株主に割り当てて上場を果たせば、「6250億円の価値を生む」と独自に計算したものでした。
この報道を受け、ニューヨーク株式市場のソニーの米預託証券は前日より一時20%近くも急騰しました。
ソニーの埋もれた価値を見出した
ダニエル・ローブがソニーのエンタメ部門に目をつけたのは的外れではありません。
共同創業者の盛田昭夫が主導し、1989年に名門コロンビア・ピクチャーズを巨額の資金を投じて買収したが、その後は放漫経営がたたり、1990年代半ばまで低迷が続きました。
ですが、有力テレビCBSでプロデューサーの経歴を持つハワード・ストリンガーを引き抜くと状況が変わりました。
効率を重視する経営に変わり、安定してヒット作が生まれるようになり、エンタメ部門はやがて、ソニーの屋台骨を支える存在になったのです。
対照的に下降線をたどったのが、中核のエレクトロニクス事業です。
デジタル時代で価格下落に歯止めがきかず、液晶テレビなどが恒常的に赤字を計上するようになり、同事業は2014年3月期まで過去10年のうち、6年が最終赤字という低迷ぶりです。
ダニエル・ローブはこのアンバランスな収益構造に着目しました。
日本に本社を構えるソニーでは、同社をカバーする担当アナリストの目線もとにかく不振のエレキ部門に向かいがちで、このため、安定した収益を上げているエンタメ部門は、株式市場で適切に評価されているとは言えません。
割安株を探すバリュー投資家にとって、埋もれた価値を顕在化させるのは至上命題でもあり、ソニーの場合、エンタメ部門の株式をわずかでも上場させれば、株主に大きな利益をもたらすと予想しました。
ところが、ソニーの経営陣は、経営理念に背く行為だとし、この提案を拒否しました。
ただし、ソニーも全てを拒否したわけではなく、ダニエル・ローブが不透明と批判したエンタメ部門の情報開示を透明にすると約束しました。また、約2億5000万ドルのコスト削減も打ち出しました。
他にダニエル・ローブが投資している日本企業はソフトバンクとIHI
アベノミクスを評価したダニエル・ローブは、ソニーにとどまらず、投資先を広げています。
2013年11月にはソフトバンク株を大量取得したことを公表しました。関係者によれば、投資額は10億ドルを超え、米携帯3位のスプリント買収など、積極的な海外戦略を高く評価しています。
さらに2014年に入ると、IHIへの投資も公表しました。
リーマンショックのどん底から復活したダニエル・ローブ
リーマンショックの時、ダニエル・ローブは絶望の淵にいました。
買い待ちしていた投資先の株価がことごとく急落し、2008年の投資収益は30%以上のマイナスとなります。
大手年金基金などから解約の要請が相次ぎ、リーマンショック直前には50億ドルほどあった運用資産は、2009年4月には16億ドルまで急減しました。
米大手銀行を対象に行われた重要イベントを見逃さなかった
誰もが世界景気にも金融市場にも極めて弱気だった時、ダニエル・ローブは、2009年2月に米政府が米大手銀行を対象に資産を査定するストレステストの詳細を公表した重要なイベントを見逃しませんでした。
首都ワシントンDCに向かい、関係者に片っぱしから面会しました。ストレステストの本気度と、その効果について聞くためです。
シティーグループなどの米大手銀行はこれを機に、バランスシートにたまった不良資産を整理し、リスク投資を縮小する、必要であれば政府の資金も活用して、自ら経営を改革しようとするという結論にたどり着きました。
そうだとすれば、米銀の株式は買いだと。
米国株は2009年3月に危機後の底値をつけると、その後は急速に回復し、思惑は見事に当たり、金融株も急反発しました。
「たくさんのことを知っていることが投資で大事なわけではない。むしろ、その時々で最も重要なことは何かを察知できる能力の方が重要だ。あの時、私が理解しなければいけなかったのは、ストレステストが救世主になるかどうかの一点に尽きた」
どん底から這い上がった経験が日本企業への投資に結びついた
運用資産の急拡大に伴って、ダニエル・ローブには投資先を多様化するニーズが生まれました。その局面で世界の市場において存在感を増してきたのが日本でした。
物言う株主にとって日本は十分に開拓された地とは言えません。
米国のヘッジファンドが比較的手薄な日本で、自分が理解できる企業を先回りして買う。ダニエル・ローブのそんな思惑が垣間見えます。
投資の成否はまだ少ししか見えませんが、もし日本の株投資が成功を収めれば、海外のファンドマネーが日本に向かう流れがますます加速する可能性もあります。
まとめ
- ダニエル・ローブが公表したソニーへの大型投資
- ソニーの埋もれた価値を見出した
- 他にダニエル・ローブが投資している日本企業はソフトバンクとIHI
- リーマンショックのどん底から復活したダニエル・ローブ
- 米大手銀行を対象に行われた重要イベントを見逃さなかった
- どん底から這い上がった経験が日本企業への投資に結びついた
次回は、ダニエル・ローブから学ぶ投資の心得『株主のための大胆な戦略』についてお伝えしたいと思います。
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