投資の基本は勝つことより負けないこと
株式投資、不動産投資、為替など、すべての投資において必ず心がけておくことがあります。
それは、勝つことより負けないことです。
ウォーレン・バフェットのこんな名言があります。
「ルール1・損をしないこと。ルール2・ルール1を絶対忘れないこと」
多くの機関投資家は市場平均に負けている
機関投資家の運用成果を見ると市場に負けています。
時々市場平均を上回る成果は見られるが、何十年間の年間収益率の平均を計算してみると、負けているのです。
50年ほど前の資産運用の世界では、市場に勝つことが信念がありましたが、現代ではそれがあてはまりません。
もし何十年もの長い期間で、市場平均を上回る成果を出せる可能性があるとすると、アクティブマネージャーのするべきことが3つあります。
- 機械的に並んだ株価指数よりも収益が高くなるようにポートフォリオを組み直すこと
※銘柄を変えたり、株行きセクターの順位や組み合わせを直したり、異なるポートフォリオを組み込むことです。 - 有能なアナリストを集めて安く買える株や高値で売れる株などを全力で探すこと
- 1と2にかかった莫大な人件費などのコストを上回る成果を出すこと
市場全体の90%以上の売買金額は機関投資家が占める
近年、複雑に入り組んだ株式市場全体の売買金額の90%以上は、機関投資家が占めていると言われています。
個人投資家の数も相当多いのですが、運用している金額の規模で考えると、圧倒的に機関投資家の運用資産は莫大なものとなります。
機関投資家が市場の平均を作り出している
多くの機関投資家は、市場平均より高い成果を目標にしていますが、機関投資家自身が市場の平均を作り出しているので、自分自身に打ち勝つことができない限り高い成果は出せません。
その上、投資顧問量や手数料などのコストを支払わなければなりませんので、長期で見ると運用機関の全体の75%の成績は市場平均を下回ります。
投資家の世界の資産運用はほとんどが市場に勝つことができず、多くの投資信託や年金信託、財団基金の運用は、市場に勝つことが勝者とするならば上手くいかないということになります。
投資の基本は市場平均に勝つことより負けないことが大事
ここまでは、機関投資家が市場平均に勝つことは難しいと述べましたが、市場平均に勝つことが投資をする上で正しいとは言えません。
その理由は、市場平均に勝とうとすることが投資による失敗、すなわち資産を減らしてしまう大きな要因になるからです。
私たちは投資のプロではなくアマチュアだと認識する
運用資産(投資)は勝者になれなくても敗者にならない事を目標とするべきなのです。
勝者になろうとする試合がプロの試合、敗者にならないための試合がアマチュアの試合と仮定して、テニスの試合で例えてみます。
※ここでのプロとは市場平均に勝つことができるほんの一握りの機関投資家や個人投資家で、アマチュアとはその他大多数の投資家です。
プロはミスをしないがアマチュアはミスをする
プロの試合はウィニング・ショット(勝とうとすること)で勝負が決まりますが、アマチュアの試合はミスによって勝負が決まります。
プロの試合もアマチュアの試合も、どちらも物やルールなどが同じですが、この2つは全く違う試合です。
精神的な科学的。統計的分析の結果で
「プロは得点を勝ち取るのに対して、アマチュアはミスによって得点を失う」
とされています。
プロのテニスプレイヤーは最終結果が勝とうとする行動によって決まります。
ラリーの間、強力なショットを放ちボールを打ち込んで勝利を得ます。一流になればミスを犯しません。
ですがアマチュアは全く違い、長いラリーやリカバリー・ショットは滅多に見られません。
アマチュアプレイヤーは敵に勝とうと思っても、自ら墓穴を掘って終わります。
アマチュアの試合のほとんどが、ミスの少ない選手が勝者となるのです。
多くの統計結果で、プロのテニスプレイヤーはポイントの80%が勝ち取ったもので、アマチュアプレイヤーは80%が敵失によるものでした。
自分がアマチュアだと認識しているのなら、とにかくミスを減らし、確実なテニスをすることが負けないこと(勝利)に繋がるのです。
プロのテニスプレイヤーの場合が勝とうとするゲームになり、アマチュアプレイヤーの場合は負けないようにするゲームになります。
信用取引などレバレッジをかけた投資は戦争と同じ
軍事問題を専門とする有名な歴史家であるサミュエル・エリオット・モリソン監督が、「戦争ではミスは避けられない。軍事的決定を行う際、敵の戦力と計画に関する推定に基礎を置くが、よく間違う。また知恵も働かすが決して完璧ではなく、人を誤らせるものである。戦争では戦略上ミスが少ない方が勝つ。」と結論付けました。
これをレバレッジをかけた投資に置き換えて考えると、一度のミスが死に繋がるということです。
それならば、なおさら負けないようにする(ミスをしない)ことが大事だと言えるのではないでしょうか。
時代の流れとともに投資の世界も変わっていった
機関投資家の資産運用は、時代の流れとともに勝つことを考える運用から負けないようにする運用に変わっていきました。
飛行機でもそうですが、80年前までは飛行機を飛ばそうと考え、空を飛ぶことは勝とうとする運用になりますが、今では空を飛ぶということに絶対ミスをしてはいけないというの負けないようにする運用に変わっていきました。
機関投資家が市場を支配するようになった
株式市場が根本的に変わったのは、1970年代から1980年代にかけて機関投資家たちが市場を支配するようになってからです。
今では優秀な専門家と負けないようにする市場で投資をしており、勝ち残るのはミスをできるだけ少なくした投資家です。
ですが、負けないようにする時代に変わってもヘッドファンドや投資信託、年金基金などの機関投資家は激しい競争を繰り広げています。
また、個人投資家自身で個別銘柄を買うのであれば、個人投資家の売買相手とは圧倒的な情報・知識・経験を兼ね備えた機関投資家だということです。
負けないように運用している機関投資家へ投資するならコストを考えなくてはならない
- 機関投資家は市場平均に負けている
- 負けないように投資することが大事
- 市場は機関投資家が支配している
- 個人投資家の売買相手は機関投資家
以上のことを踏まえて考えると、個人投資家の選択肢は大きく分けて2つの方法で投資するべきだと考えられます。
- ウォーレン・バフェットのように、徹底的に企業のことを調べ上げて、個別銘柄に投資する
- 機関投資家に運用を任せる
1の場合、大きな収益を得られる確率は上がりますが、その分企業の調査や買うタイミングを見誤ると、大きな損害に繋がるデメリットがあります。
2の場合だと、機関投資家に支払うコストなどを上手く考えれば、より安全に安定的に市場平均に近い収益を上げれる可能性が高くなります。
売買頻度が多い機関投資家(アクティブ・ファンド)はコストが大きくなる
機関投資家には大きく分けて2種類あります。
売買頻度が多いアクティブ・ファンドとインデックス・ファンドです。
アクティブ・ファンドのコストが高くなる理由は売買手数料
例えば、1年間のポートフォリオ回転率を100%と仮定し、売買手数料(取引コスト)として買いを1%、売りを1%、投資顧問料を1.25%と仮定すると全コストは年率3.25%となり、その内の売買手数料が2%となってしまいます。
アクティブ・ファンドが市場の平均に負けないようにするには、取引コストの年率3.25%を上乗せして実績を出さなければなりません。
例えば市場収益率を10%とし、市場平均と同じ成績を上げるためにコスト支払い前では13.25%でなくてはなりません。
インデックス・ファンドへの投資がコストを抑えより負けないように投資できる
市場を忠実に反映すれば市場に負けることはありません。
インデックス・ファンドは運用成果を測定しているデータによれば、長期的により高い収益を上げています。
その大きな理由は、アクティブ・ファンドのように売買手数料が高くならないからです。
インデックス・ファンドで負けないように収益を上げるには長期投資は必須
負けないように投資をする(インデックス・ファンドへの投資)上において最も困難なのは最適な投資政策を見出すことではなく、投資政策を維持し続けることです。
相場の高騰期や暴落期に振り回されずに資産を長期運用をすることは難しく、時に世間では悪評を買うことがあります。
だから投資家は運用の方針などを守っていく必要があります。
まとめ
- 多くの機関投資家は市場平均に負けている
- 市場全体の90%以上の売買金額は機関投資家が占める
機関投資家が市場の平均を作り出している - 投資の基本は市場平均に勝つことより負けないことが大事
私たちは投資のプロではなくアマチュアだと認識する
信用取引などレバレッジをかけた投資は戦争と同じ - 時代の流れとともに投資の世界も変わっていった
機関投資家が市場を支配するようになった - 負けないように運用している機関投資家へ投資するならコストを考えなくてはならない
売買頻度が多い機関投資家(アクティブ・ファンド)はコストが大きくなる
インデックス・ファンドへの投資がコストを抑えより負けないように投資できる
市場に勝つことやより大きな利益を目標にし、あたかも投資のプロであるかのように機関投資家と戦うと、大きな確率で投資に失敗し資産を減らすことになります。
長期的な投資目的を設定し、より安定的に市場の平均を反映した成績を収めているインデックス・ファンドへの投資が、負けないようにするための投資の基本であり、それを実現させるために辛抱強く待てば、負けないこと=勝つことができるのではないかと思います。