ジム・チェイノスから学ぶ投資の心得『中国暴落に賭ける空売り』

ジム・チェイノスから学ぶ投資の心得『中国暴落に賭ける空売り』

1985年に空売り専門のキニコス・アソシエイツを米国で創業。

運用資産は約60億ドル。

空売りファンドとして世界最大級を誇り、2001年に経営破綻した米エネルギー大手エイロンの不正会計を見抜いたことで有名。

金融犯罪や投機事件の歴史に精通している。

ジム・チェイノスはバリュー投資家の全く逆の空売り投資家

ニューヨークのウォール街でジム・チェイノスの名を知らぬ者はいません。

1985年に自身のヘッジファンド、キニコス・アソシエイツを設立し、たぐいまれな運用成績と、極めてユニークな投資スタイル、その両方がうまく重なり合い、ヘッジファンド業界の有力なプレーヤーとして君臨してきました。

割安な企業を探して資金を投じるバリュー投資家ではなく、ジム・チェイノスの手法はその全く逆を行きます。

実力以上に買われ過ぎた企業を見つけ出し、空売りすることで収益を上げようとする投資家です。

その「空売り王」の異名を持つほどのジム・チェイノスが近年最も力を入れているのが中国の空売りです。

 

中国の不動産バブルは世界最大の不動産バブルだった日本に匹敵する

ジム・チェイノスは、中国の不動産バブルに警鐘を鳴らします。

自前のアナリストを定期的に現地に送り込み、中国の不動産市場を観測してきました。その結果見えてきたのは、内陸の地方都市を含めて、いたるところに住み手のいないマンション群が乱立している現実だった。

ジム・チェイノスの試算では、建設コストで見た中国の住宅の市場価値は、同国のGDPの300〜400%まで高まっています。

長期のデフレを招くことになった1989年の日本の不動産バブル末期が約375%だったことから、中国もかなりの危険水域に入っていると言えます。

 

2009年に中国売りを公言した時笑い者にされた

中国の住宅バブルが歴史に名を残す規模であるのは間違いない」ジム・チェイノス断言します。

中国の空売りを公にしたのは2009年末でした。その時、そこら中から笑い者にされ、「正気とは思えない」とウォール街でそんな声を幾度となく聞きました。

金融危機後の低迷期にあった当時の米国にとって、中国は頼みの綱でした。

中国は、主要新興国BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)の中心的な存在であり、高い経済成長で世界景気を支える原動力になっていました。

しかしジム・チェイノスは、中国経済の成長は過度の投資に依存した構造であると考えており、バブルはいずれ、崩壊に向かわざるを得ないと言います。

 

中国の金融システムは異常である

ジム・チェイノスが特に問題視しているのは、中国の金融システムです。

銀行などの金融機関は、毎年のようにGDPの4〜5割にあたる信用(借金)を新たに創造してきました。

経済成長を重視する政府のもとで、国有銀行が過剰な融資に走り、その有り余った資金が流れ込んで不動産ブームを作り出しました。

あるいは鉄鋼や造船といった基幹産業による巨額の増産投資のきっかけを与え、過剰設備が深刻になりました。

 

中国政府は金融支援はいつか打つ手がなくなる

中国が抱える問題の根源は、じゃぶじゃぶになったマネーの存在に行き着きます。

中国の金融機関は大量の不良債権を抱えているのに、政府出資の資産運用会社に不良債権を丸ごと引き受けさせて問題を先送りにしています。

いざとなれば中国政府が危機の収拾に動き、当局には問題の解決能力があると市場では言われ続けていましたが、何年も前からジム・チェイノスは「勝手な信仰にすぎない。もはや中国政府が打つ手は限られてる」と語っています。

2015年9月現在、それが現実になろうとしていることを誰が予想したでしょうか?

 

ジム・チェイノスの中国空売りの舞台は香港H株市場

中国の上海市場はもともと外国人投資家が空売りするのは難しいため、ジム・チェイノスは、中国本土の企業が上場する香港のH株市場で、不動産開発や銀行、建設関連株を空売りしています。

香港であれば十分な流動性があり、空売りの場として適しています

 

中国経済に影響を受ける資源関連も空売りの対象

ジム・チェイノスは、中国をテーマにしたもう一つの投資手法も実践しています。

中国経済の成長に急ブレーキがかかった場合に大きな影響を受けるのは、中国が圧倒的ない買い手となってきた鉄鉱石などの資源です。こうした考えから、オーストラリアやブラジルの資源大手の株式も空売りの対象となっています。

 

中国売りにたどり着いたのは実体経済に関わるデータを調べたから

なぜジム・チェイノスは早い段階から中国の空売りという独自の戦略を持つことができたのでしょうか?

周りが買っているから自分はその逆を行くという単なる逆張り投資ではありません。

ジム・チェイノスは中国売りにたどり着くまでにあらゆる情報を独自に収集しました。

電力消費、石炭消費などの実体経済に関わるデータなど、手に入れられるものは全て手に入れました。

中国の経済統計はもともと信ぴょう性に欠けます。ですので、中国に進出している米企業の財務報告書にもくまなくあたり、中国の実需の動向を別の角度から抑えました。

信頼できる米企業の経営者の発言から中国経済の実態を探り、独自の分析を積み上げることで、ジム・チェイノスは「中国売り」という決断に至ったのです。

この妥協ない、徹底した調査もジム・チェイノスが長らく市場で成功してきた証だと言えます。

 

まとめ

  • ジム・チェイノスはバリュー投資家の全く逆の空売り投資家
  • 中国の不動産バブルは世界最大の不動産バブルだった日本に匹敵する
  • 2009年に中国売りを公言した時笑い者にされた
  • 中国の金融システムは異常である
  • 中国政府は金融支援はいつか打つ手がなくなる
  • ジム・チェイノスの中国空売りの舞台は香港H株市場
  • 中国経済に影響を受ける資源関連も空売りの対象
  • 中国売りにたどり着いたのは実体経済に関わるデータを調べたから

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