リーマンショックが起こった2008年を振り返りどのように株価が暴落したかを見てみる
1929年ウォール街大暴落、1987年ブラックマンデー、1998年アジア通貨危機、2001年アメリカ同時多発テロ、2011年ユーロ危機など、株式市場の歴史を振り返れば、様々な暴落や危機が起こりました。
この記事を書いている2015年8月26日も、中国を震源地とする、世界同時株安が巻き起こっている真っ只中です。
そこで今回は、世界最大の経済国アメリカを震源地とした、100年に一度と言われている、サブプライムローン問題・リーマンブラザーズ破綻などが起こった2008年の「リーマンショック(世界同時金融危機)」を振り返ってみましょう。
2008年の株式市場は波乱を予感させる幕開けでした
2008年1月4日の大発表会は、日経225先物が前日比(前年2007年12月28日)14660円 -590円 -3.87%から始まる、波乱の年を予感させる幕開けでした。
年初から12営業日で-19%の暴落(約12500円ほどに下落)、WTI原油先物は100ドルの大台を突破しました。
FRBは0.75%利下げをし、金利は3.5%になり、月末には更に0.5%引き下げ、金利は3.0%になりました。
マイクロソフトが米ヤフーに買収を提案するも、交渉が難航し、遂に5月に断念しました。
金融各社の評価損計上の動きが加速していき、早期の処理には評価の声が聞こえて、日本のバブル崩壊の二の舞にはならないと強調していました。
企業業績は最高益更新を見通していましたが、デカップリング論が徐々に後退していきます。
3月はリーマンショックの幕開けとも言える株価の暴落が起こった
3月5日
米投資ファンド大手のカーライル傘下のカーライルキャピタルが、追加担保の提供ができず、デフォルト宣告を受けます。
3月6日
NYダウが200ドル急落し、10日までに3日間で500ドルの暴落。
3月7日
ドル円が一時101.44円まで下落。
3月10日
米投資銀行大手ベアスターンズに破綻の噂が広まり、同社株11%急落します。
3月11日
欧米5中央銀行が緊急の追加流動性対策を発表し、NYダウは史上4番目(当時)となる上げ幅を記録し、大幅反発。
3月13日
カーライルキャピタルと債権者の会談が不調に終わったと伝わり、ドル円が12年ぶりの100円台になり、更に同日に99円台に突入します。
3月14日
米大手銀行のJPモルガンチェースがFRBの流動性供給支援を受け、ベアスターンズを1株2ドルで救済買収すると発表します。
3月17日
週明けの市場で大混乱が起こり、ドル円が一気に95.71円の安値を更新。
3月18日
GS、リーマンブラザーズが黒字決済。FRBが0.75%利下げを行い、金利が2.25%になり、NYダウが大幅反発し、ドル円は翌日19日にかけて、一時100円台を回復します。
ベアスターンズの破綻で不安材料は無くなり、長かった暗いトンネルの出口は見えてきている。そんな雰囲気が市場に広がり始めていました。
4月は明るい材料が出てきて市場は明るい兆しを予感していた
4月に入ると、株式市場の反発が始まり、信用危機は出口に近づきつつあるとの見方が強まります。
原油価格は119.9ドルにまで到達し、市場の関心はインフレへ移行します。
日本では、白川日銀総裁が就任します。
FRBが更に0.25%利下げをし、金利は2.0%へ。
ドル円が105円台を回復します。原油が130ドルを突破し、各国が穀物の高騰に強い懸念を示します。
食料サミット開催を控え、関連銘柄の人気が加速していきます。
引き続き金融機関が損失を計上し、増資を相次いで発表しますが、市場の反応は薄く見逃されていました。
ドル円が一時108円台へ回復し、原油価格は140ドルを超え、ガソリン価格の高騰などが一般ニュースで連日報道されます。
日本国内では、洞爺湖サミットをテーマに環境関連銘柄が賑わうなど、個別相場が活況となり、個人投資家に盛り上がりを見せていました。
7月から8月にかけて雲行きが怪しくなってくる
7月に入り、原油価格が147.27ドルで天井をつけ、関連銘柄には出尽くしの動きが広がります。
ファニーメイ、フレディマック株が暴落し、国有化との観測否定されますが、米国政府は両社への支援を決定します。
メリルリンチが増資を行い、日本国内では食品値上げが相次ぎインフレ批判が高まっています。
8月には、ドル円が110円台になり高値に迫ります。
天井をつけた原油価格は、110ドル台までスピード調整していくと同時に、世界経済の見通しが悪化していき、需要減速が懸念されていきます。
北京オリンピックが開幕し、ロシアがグルジアに侵攻し、一時停戦。
アーバンコーポレーションが破綻。韓国産業銀行がリーマンブラザーズ買収検討も、二転三転する報道をめぐり混乱していきます。
2008年9月リーマンブラザーズ破綻
そして運命の9月がやってきます。
9月1日
福田首相が辞任を表明。
9月5日
米雇用統計の大幅悪化を受けて、ドル売りが加速し、ドル円が一時105円台へ。
9月8日
ファニーメイ、フレディマックへの公的資金の注入が決定し、ドルが一斉に買い戻され、ドル円が一時109円台にまで急伸。
9月10日
韓国産業銀行がリーマンブラザーズとの出資交渉を断念。メリルリンチなど、金融株が大暴落し、緊張が一気に高まります。
9月11日
米WSJ、バンクオブアメリカがリーマンブラザーズ買収交渉と報じられ、その他様々な憶測が飛び交いますが、当事者はコメントせず。
9月12日
原油価格が100ドル割れ。米当局がリーマンブラザーズ破綻回避へ全力を尽くします。
9月15日
リーマンブラザーズ破綻。
リーマンブラザーズが連邦倒産法第11章の適用を申請し、負債総額は64兆円(当時)で米国市場最大規模の倒産。
同日、バンクオブアメリカがメリルリンチの買収で合意し、NYダウはブラックマンデーに次ぐ504ドルの暴落を記録します。
9月16、17日
AIG株が一時1.25ドルまで急落し、FRBが9兆円の緊急融資へ動きます。
ロシア市場が一時取引停止に。ドル円が一時103円台へ。
9月19日
米SEC、金融株への空売り禁止を発動。
9月22日
ゴールドマンとモルガンスタンレーが銀行持株会社へ移行。
リーマンブラザーズ破綻からわずか1週間で、米国から投資銀行が消滅します。
同日、三菱UFJがモルガンスタンレーへの出資を発表。
野村ホールディングスがリーマンブラザーズのアジア事業買収で合意。
9月24日
麻生新首相誕生。
ウォーレン・バフェットがゴールドマンへ出資を決定。
9月25日
米国で総額7000億ドル規模の金融安定化法案の審議。
9月26日
S&L最大手ワシントンミューチュアルが破綻。
JPモルガンチェースが救済買収。米国以外も銀行救済を急ぎます。
9月29日
米下院で金融安定化法案がまさかの否決され、NYダウは、史上最大となる777ドル(6.98%)の暴落を記録します。
9月30日
歴史的な暴落から一夜明けたこの日、NYダウは+485ドルの大幅反発となります。金融安定化法案の修正案再可決への期待、議会関係者も早期成立への自信を示しました。
米国による全力の救済も虚しく10月の株式市場は世界中を巻き込んだ大暴落に見舞われる
米国時間の10月3日、全世界が固唾を飲んで見守る議会中継、次々と投じられる賛成票とともに、NYダウは上昇していき、可決直前の上昇幅は、300ドルに達していました。
そして、金融安定化法案が可決されます。
これで全てがうまくいく。多くの人がそう確信し、安堵しましたが、可決直後から、大引けまでにNYダウが470ドルも急落します。
2008年10月のNYダウと日経平均は歴史的な乱高下を繰り返し暴落していった
10月1日
NYダウ 10831.07 -19.59
日経平均 11368.26 +108.40
10月2日
NYダウ 10482.85 -348.22
日経平均 11154.76 -213.50
10月6日
NYダウ 9955.50 -369.88
日経平均 10473.09 -465.05
10月7日
NYダウ 9447.11 -508.39
日経平均 10155.90 -317.19
日経平均が5年ぶりに一時10000円割れ。アイスランドが非常事態宣言。
10月8日
NYダウ 9258.10 -189.01
日経平均 9203.32 -952.58
欧米6中銀が協調利下げ。日経平均史上3番目となる下落率。
10月9日
NYダウ 8579.19 -678.91
日経平均 9157.49 -45.83
10月10日
NYダウ 8451.19 -128.00
日経平均 8276.43 -881.06
日経平均が一時下落幅1000円を超し、日経225先物が一時、約-20%の売り注文殺到で、サーキットブレーカーが発動します。
10月13日
NYダウ 9387.61 +936.42
日経平均 休場
10月14日
NYダウ 9310.99 -76.62
日経平均 9447.57 +1171.14
米国政府が金融機関に資本注入を決定し、日経平均が史上最大の上昇率を記録します。
※この日の暴騰を詳しく知りたい方はリーマンショックと共に記録した日経平均史上最大の上昇率記録した日を振り返ってみました
10月15日
NYダウ 8577.91 -733.08
日経平均 9547.47 +99.90
10月16日
NYダウ 8979.26 +401.35
日経平均 8458.45 -1089.02
日経平均が1000円を超える暴落。下落率はブラックマンデーに次ぐ大きさです。
※この日の暴落を詳しく知りたい方はリーマンショックと共に記録した史上2番目の下落率を記録した日を振り返ってみました
10月17日
NYダウ 8852.22 -127.04
日経平均 8693.82 +235.37
10月20日
NYダウ 9265.43 +413.21
日経平均 9005.59 +311.77
10月21日
NYダウ 9033.66 -231.77
日経平均 9306.25 +300.66
10月22日
NYダウ 8519.21 -514.45
日経平均 8674.69 -631.56
10月23日
NYダウ 8691.25 +172.04
日経平均 8460.98 -213.71
10月24日
NYダウ 8378.95 -312.30
日経平均 7649.08 -811.90
日経平均が5年半ぶりに8000円割れ、ドル円91円台へ。
恐怖指数であるVIX指数の最高値が89.53まで上昇。
10月27日
NYダウ 8175.77 -203.18
日経平均 7162.90 -486.18
日本のバブル崩壊後、最安値7603.76円を更新。1982年以来となる26年ぶりの水準まで落ち込みます。
10月28日
NYダウ 9065.12 +889.35
日経平均 7621.92 +459.02
日経平均が一時7000円割れに。
10月29日
NYダウ 8990.96 -74.16
日経平均 8211.90 +589.98
FRBが更に0.5%利下げし、金利が1.0%になります。
10月30日
NYダウ 9180.69 +189.73
日経平均 9029.76 +817.86
2008年10月主要指標の推移
- 日経平均:11396.61 → 8576.98 (最安値6994.90)
- NYダウ:10847.40 → 9325.01 (最安値7882.51)
- NASDAQ:2075.1 → 1720.95 (最安値1493.79)
- 中国:2267.394 → 1728.786 (最安値1664.925)
- ロシア:1189.06 → 773.37 (最安値549.43)
- インド:13006.72 → 9788.06 (最安値8566.82)
- REIT指数:1146.66 → 863.21 (最安値685.27)
- マザーズ:406.45 → 299.24 (最安値255.95)
- USD/JPY:106.10 → 98.46 (最安値90.82)
- EUR/JPY:149.53 → 125.53 (最安値113.58)
- AUD/JPY:84.05 → 65.47 (最安値54.96)
- WTI原油:96.69 → 65.01 (最安値61.71)
リーマンショックを境に世界中で金融緩和・ゼロ金利政策が始まった
11月、パニック的な売りは収束しましたが、ボラティリティが高い日が続きます。
米国大統領選は、オバマ氏が勝利し、初の黒人大統領が誕生しました。
原油価格は、40ドル台に到達し、インフレ懸念は完全に消滅しました。
世界同時不況、史上最大の金融危機との認識が広がり、各国は政策総動員し、米シティの救済が決定されます。
パナソニックが三洋電機の買収で合意します。
急速な円高になり、特にユーロ安が急速に進みます。
トヨタを始め、日本国内企業に下方修正が頻発し、急激な景気悪化で自動車業界は危機に陥ります。
米ビッグスリーの資金繰り不安は深刻化し、救済の是非をめぐり、激しい論争が巻き起こり、ゼネラル・モーターズ株は一時2ドルを割りました。
12月には、原油価格が30ドル台に突入し、7月の高値から75%も下落しました。株価は落ち着きますが、ドル安が止まらず、一時、1995年以来となる87円台へ突入する場面も見られましたが、FRBの大幅利下げを行い、政策金利は0〜0.25%へ引き下げられました。
日銀も同じく、0.3%から0.1%に利下げを行い、ECB、BOEなども利下げを行い、金融緩和が世界的に進みました。
ビッグスリー救済法案成立の見通しが一転し、廃案になり、年内の破綻回避へ米国政府が緊急のつなぎ融資を行います。
日本では、トヨタが最下方修正で、初の連結営業赤字へ転落します。そしてリストラが本格化し雇用不安が社会問題になりました。
そして、2008年12月30日の大納会は、年間下落率-42.12%の過去最大を記録し、一年を終えました。
まとめ
- 2008年の株式市場は波乱を予感させる幕開けでした
- 3月はリーマンショックの幕開けとも言える株価の暴落が起こった
- 4月は明るい材料が出てきて市場は明るい兆しを予感していた
- 7月から8月にかけて雲行きが怪しくなってくる
- 2008年9月リーマンブラザーズ破綻
- 米国による全力の救済も虚しく10月の株式市場は世界中を巻き込んだ大暴落に見舞われる
- 2008年10月のNYダウと日経平均は歴史的な乱高下を繰り返し暴落していった
- リーマンショックを境に世界中で金融緩和・ゼロ金利政策が始まった