市場(マーケット)に潜む誘惑と落とし穴が投資に必要な『心の調整力』を失わせる
株式投資などで、市場に参加をする動機として挙げられるのは、将来のためにお金を増やしたい、楽して儲けたい、家族や友人に自慢したい、自由がほしいなど、人それぞれに様々な動機があります。
全てに共通する大きな括りとしては、希望(欲求を満たす)ではないでしょうか。
ですが、市場(マーケット)の中においては、その希望が、恐怖を生み損失を出す原因になります。
しかし、その希望や恐怖は、人として生まれ持った本能であり、ごく一般の社会人なら欠けては生きていけない心なのです。
ところが、一貫した収益を上げられる投資家になるためには、その心を上手くコントロールできなくてはいけません。
市場(マーケット)の中は夢や魅力が溢れている制約のない自由な空間
自由だと言っても、もちろんいくらかの形式的な制約はあります。
株式取引なら証券口座を開設し、そこにお金を入れなければならないことや、持っているお金以上(信用取引を除く)は売買できないなどです。
しかし、一旦トレードを開始する準備が整えば、どのように投資するかという可能性には、ほとんど際限がなく、その投資先は無限に広がっています。
無限に広がる市場の中には無限の可能性があるがゆえに失敗する
では、なぜそうした無限の環境にアクセスすると、結局失敗してしまう投資家がいるのでしょうか?
それは、無限の可能性のうえに、その可能性から優位性を得ようとする際限ない自由が加わり、投資家自身に独特で特殊な心理的挑戦をもたらすからなのです。
こうした挑戦を把握して、きちんとそれを処理しようと準備している人はごくわずかで、ほとんどの人はそのことにすら気づいていません。
人が、無限の可能性を秘めたものを本能的に欲しがるのは当然です。しかし、だからといって効果的に行動するだけの心的能力は無意識には働かないのです。
そして、自由で制約のない、無限の可能性の中には、大きなダメージをもたらす可能性も秘めていることを知っておかないといけません。
そこで求められるのは、心の調整力です。学歴や知性や他分野(投資以外)で努力してどれだけ成功しているかではありません。
人なら誰しも生まれ持った心が調整力を失わせる
私たちは皆、社会環境(家族、街、地域、国)の中で育ってきました。
その中は様々な制約があり、それに従い生きています。例えば、法律や会社・学校のルール、人として常識のルールなどがあります。
これが、個人の行動様式に制限を加え、自己表現を支配します。しかし、生まれた時からこの社会構造は存在し、私たちはその中で育ち、それぞれの頭の中に潜在的に、しっかりと確立しているのです。
その潜在的に確立している制約が根付いている状態で、突然、自由で無限の可能性を秘めた市場(マーケット)に入れば、どれだけ優秀な知性や力を持っていても関係はなく、市場の中での心の調整力を意識しなければ、たちまち飲み込まれてしまいます。
市場(マーケット)に参加すれば皆赤ん坊のようなもの
赤ん坊が、ストーブの上で温めてあるヤカンに触ろうとする。すると突然部屋の向こうから「危ないから触っちゃダメ!!」と怒鳴り声が聞こえ、赤ん坊は尻もちをつき、泣き始める。
これはよくある日常の出来事です。
この時、赤ん坊は、ヤカンが熱いくて火傷をすることなど知るわけもなく、ただ好奇心の力だけでヤカンを触ろうとしたのです。
突然怒鳴られた赤ん坊は、ヤカンという自分の欲求を満たしてくれるであろうものに触れることができず、多大なる不安と精神的苦痛を強いられたと思います。少し大げさですが。
しかし、これは投資の世界にも当てはめることができるのです。
心の調整力を持たない投資家が市場に参加することは、ヤカンが熱いことを知らない赤ん坊と同じなのです。
日々、市場から発信される無限の情報、それに伴う価格(株価)の騰落は、ヤカンに触ろうとして怒られた赤ん坊のように、不安や精神的苦痛を強いられます。
それと同時に、この現象は「人として当然のことである」というのも覚えておいてください。
人として当然の心理が一貫した収益を失う
普段の社会生活で、欲しい物があり十分なお金があった場合、手に入れようとする。怖い思いをして思わず逃げたくなる。こういった心理は、人として当然です。
これと同じように、株価が上昇局面に入り、欲が出て売り損ねた。突然の悪材料が出て株価が暴落し、恐怖のあまり売ってしまった。このような経験を持っている人は大勢いると思います。
しかし、市場に参加する場合、このような心理は、一貫した収益を失うことに繋がります。
売り損ねた、売ってしまった、この行為が悪いわけではなく、希望のあまり売り損ねた、恐怖のあまり売ってしまった、この心理が一貫した収益を失うのです。
市場(マーケット)が発信している情報は希望や恐怖ではない
一貫した収益を上げている投資家は、市場(マーケット)が発信する情報には耳を傾けます。しかし、それに希望や恐怖を感じて売買をすることは決してありません。
確かに、市場(マーケット)が発信した情報に合わせて株価(価格)は動きます。
この値動きの中には、勝者の投資家と敗者の投資家がおり、売買しているという行為自体は一緒なのですが、売買している動機は違います。
市場(マーケット)は常に1年365日24時間動いています。
希望や恐怖で売買している投資家は、何度も何度も同じことを繰り返します。しかし、一貫した収益を上げている勝者の投資家は、市場の情報(株価も含めた)に合わせて売買しているわけではなく、一貫した規則を考慮し売買しているのです。
この違いを理解できないのであれば、勝てる投資家にはなれません。
まとめ
- 市場(マーケット)の中は夢や魅力が溢れている制約のない自由な空間
- 無限に広がる市場の中には無限の可能性があるがゆえに失敗する
- 人なら誰しも生まれ持った心が調整力を失わせる
- 市場(マーケット)に参加すれば皆赤ん坊のようなもの
- 人として当然の心理が一貫した収益を失う
- 市場(マーケット)が発信している情報は希望や恐怖ではない