偉大なる投資家から学ぶ投資の心得『デイビッド・テッパー』後編
前回の、偉大なる投資家から学ぶ投資の心得『デイビッド・テッパー』前編の続きです。
偉大なる投資家、デイビッド・テッパーは、米国の投資銀行ゴールドマン・サックスで低格付け社債(ジャンク社債)のトレーダーとして下積みをし、1993年にアパルーサ・マネジメントを設立。
会社が倒産したり、経営が悪化したりした企業の株式や社債を買い集め利益を上げる。
年率30%の投資収益を上げ、2013年のヘッジファンド報酬ランキングで1位を獲る。
運用資産は200億ドル。
誰よりも早く動き、誰よりも早く投資する(リスクを取る)
前回、最も大切なことは、様々な材料に惑わされず一点に絞って答えを出す。と述べましたが、それと同じぐらい大切なことは、リスクを取って誰よりも早く動くことです。
たとえ本質を見抜いたとしても、投資することに躊躇してしまうと、他の賢い投資家達に追い越されてしまい、すぐに株価はその材料を織り込みます。
2009年2月、デイビッド・テッパーがウォール街の金融機関への投資を始めた時、市場では経営破綻説がどこもかしこで語られていました。
3月には金融株の株価はさらに下げ、ほぼ紙くず同然の水準まで落ち込んでしまったが、デイビッド・テッパーは待ち続けました。
その確信が、大きな収益に結びついたのです。
デイビッド・テッパーはこう言いました。
「われわれが十分な分析をした時は、決して損失を恐れない。他の人々はお金を失うことをあまりに恐れていて、だからこそ投資で稼ぐことができない。」
デイビッド・テッパーが失敗から得た教訓
デイビッド・テッパーはリーマンショック時の金融危機だけ成功した投資家ではありません。
1995年の中南米経済・金融危機、1998年のアジア通貨危機などで、誰よりも早くリスクを取り投資して大きな利益を上げています。
しかし、そんな実力を兼ね備えたデイビッド・テッパーでも、投資で大きな失敗をしてしまった事もあります。
2000年のITバブルで絶好の機会を逃した
当時、人々の熱狂だけで根拠もなく上げ続けるハイテク株は調整が避けられない状況だと考えたデイビッド・テッパーは、大規模な空売りポジションを積み上げていきました。
しかし、その後も調整の気配さえ見えず、ハイテク株は一本調子で上昇していきます。
デイビッド・テッパー達に出資している投資家達は危機感を抱き、早く手仕舞うべきだと迫り、その声に屈するように、空売りポジションを手仕舞う事を余儀なくされました。
皮肉な事に、わずか一ヶ月後、ご存知の通りITバブルは崩壊したのです。
この時、空売りポジションにより多少損失は出たのですが、そのことを後悔しているのではなく、絶好の投資機会を逃した事実が最大の失敗だったのです。
後に「投資人生で最悪の決断だった」と語っています。
未来を楽観視する投資思考
投資家デイビッド・テッパーの人生を彩るのは、徹底した楽観主義とも言えます。
株価はいつか持ち直すという前提に立ち、その先々のシナリオを踏まえた上で割安銘柄を探す。
その考えは大学時代の恩師から聞いた言葉から来る。
「木は大きくなる」
たとえゆっくりでも、時が経てば木は大きくなる。これと同じように、人間の営みが織りなす「経済」も、時の流れに合わせて成長を遂げていく。
この考えに従うならば、運用の世界で最も自然な投資行動は、株価の上昇によって利益を得る「買い」ということになります。
待つ(何もしないこと)の大切さ
「たとえ企業の株価が割安に見えても、マクロ景気の急変が台無しにしてしまうことがある。そんな時はじっと待つことだ。何もしないというのは、時にもっとも困難な作業でもある。」
「いつも強気の姿勢を崩してはいないが、勝負の時が来るまでじっと待つことができる。勝負に打って出るためには、心に余裕を持つ必要がある。いつもリスクを取ってばかりでは、冷静な投資判断などできない。」
規律を重んじる投資方法
デイビッド・テッパーは、まず投資をする際、いくらまで株価が上がったら売却するかを決めます。
たとえば、投資先の企業が同業他社から買収されることになり、株価が短期間で急騰した場合、投資してからわずか数週間でも目標の株価に到達したら迷わず売却します。
逆もあり、どんなに割安な有望株であっても、その事実に市場が気づくまで株価は割安に放置されたままということはよくあることです。
そんな状態が長く続いても、焦ったり、売り抜けたりすることはしません。
「自分は確信を持って投資した。ならばそのシナリオが現実となるまで、じっくりと株式を持っていればいいではないか。」
このように考えて、株式を持ち続けることがほとんどなのです。
投資を始めてから、売却によって利益を確定するまで1年を超えるものはざらにあります。
デイビット・テッパーが語った日本株の展望
日本株の展望について、次のようにコメントしています。
「日本は輸出国家であり、円安は収益の改善に直結する。しかも投資指標で見た日本株は主要な株価指数でもっとも割安だ」
日本株が有望であるとの見方を明らかにし、個人的に注目している材料も挙げてくれました。
「日本で進む年金改革は大きい。日本の巨大な公的マネーが、よりリスクをとるようにシフトしており、私は日本株には強気だ」
公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は国内債券に偏った運用を見直し、より株式にシフトする方針です。
長らく実現してこなかった、国内機関投資家による積極的な日本株買いがついに現実のものとなるのではないか。
デイビット・テッパーの言葉には、そんな期待が込められていました。
※これらのコメントは、2013年頃のもので、現在のようにGPIFなどの国内機関投資家が、大規模な日本株買いを行う前なのです。見事に予想が的中しています。
まとめ
- 誰よりも早く動き、誰よりも早く投資する(リスクを取る)
- 2000年のITバブルで絶好の機会を逃した
- 未来を楽観視する投資思考
- 規律を重んじる投資方法
- 日本株に強気発言