ビル・アックマンから学ぶ投資の心得『納得がいかない経営には空売りを仕掛け続ける』
ハーバード大学を卒業し、20代の若さでパーシング・スクエア・キャピタルを立ち上げた。
経営革命を要求する「物言う株主」
日用品大手プロクター・アンド・ギャンブルに投資した際はCEO交代で圧力をかけた。
絶対的な姿勢を辞さず、投資先企業の経営者と衝突することも多い。
2002年〜2008年の6年間空売りし続けたMBIAとの戦い
ビル・アックマンの名前が知られるようになったのは、MBIAとの6年にわたる戦いです。
当時のMBIAはトリプルAとかく付けされていましたが、ビル・アックマンは自己資本に対して補償している債務が巨額であることに疑問を持ちました。
「MBIAは本当にトリプルAなのか」というリポートを公開し、同社株の空売りをしました。
ですが、経営陣からは「株価の操作をしようとしている!」と猛反発を受け、ニューヨーク州の司法長官のエリオット・スピッツアーから半年にも及ぶ聴取を受けており戦況は劣勢でした。
サブプライムローンを含んだ不良債権がMBIAを追い込み勝利を収める
だが、負債に頼ったレバレッジ経営が金融危機を迎えるなか、形勢は徐々に逆転していきました。
MBIAはサブプライムローンを含んだ証券化商品を多く保有していていたので、経済状態はだんだん悪化していきました。
2007年10〜12月期に20億ドル今日の最終赤字を出し、2008年6月にはついにトリプルAを失いました。
ビル・アックマンは6年にもわたる戦いで、ついに勝利を収めました。
「初めは愚かな投資だと思われたかもしれないが、じっと耐えることだ。そうすれば、いずれ自分が正しかったことが証明される。」とビル・アックマンの投資においての粘り強さが重要だと語りました。
世間の批判に耐え、6年もの間同じポジションを維持できる投資家は多くはいないです。
今回の出来事でビル・アックマンの名前が一躍知られるようになりました。
ハーバーライフの空売りで立ちはだかる2人の投資家
2012年12月に、ビル・アックマンは世界中のメディアにを招き一世一代のイベントを開き、「ハーバライフはピラミッド・スキームだ。株式の価値はゼロに等しい」と言いました。
ここで空売り対象にしたのが、健康食品販売のハーバライフです。
誰でもお金持ちになれると勧誘し、次々と販売員を増やしました。
「ねずみ講まがいだ」と非難し、高い収入を得られるのは一握りで、その他大勢は在庫を抱え生活が苦しくなると指摘しました。
さらに、ビル・アックマンはハーバライフの空売りを伝えるだけで、同社株は13%も急落しました。
マイケル・ジョンソンCEOは、「株価の操縦は許せない。SECに調査を求める。」と非難しました。
ですがビル・アックマンは、「自分は世界を変えたいと思う人間だ。独善的、腹黒いと言われたっていい。ハーバライフを追い詰めるためだったらどこまででも行く。」と使命感に燃えていました。
一攫千金を夢見る貧しい人々が吸い込まれるように販売員になっていき、苦境に訪れているといったビル・アックマンはハーバライフの案件について、「これ以上確信が持って投資をしたことがない」と言い放ちました。
さらに、「もう十分稼いだ。あとはやりたいようにやる。」と、得られた収入を全て慈善事業に寄付すると言いました。
ビル・アックマンの登場で20ドル半ばまで急落しましたが、ここから事態が思わぬ方向に動きます。
ビル・アックマンに買いで挑むダニエル・ローブ
年明けの1月に突然のようにハーバライフ株を買い進めている投資家が現れました。
それがソニー投資で有名なダニエル・ローブでした。「調査ではアックマンの指摘に根拠はないと考える。」と主張しました。
同社株の8%を持つ大株主になったと予期せぬニュースを受けて、株価は急反発しました。
そして、40ドルまで回復しました。
だが、ダニエル・ローブもハーバライフが優良企業ではないと思っていました。
これまで30年以上ビル・アックマンと同じビジネスを続けており、ビル・アックマンの投資をきっかけに当局が取り締まりに動くとは思えなかったのです。
そして、ハーバライフの売上高は海外に依存していて、ビル・アックマンの影響力の限界を感じ取ったようです。
勝負を挑むもう一人の投資家カール・アイカーン
ビル・アックマンに立ちはだかった投資家がもう一人います。
それが、アクティビストの大御所であるカール・アイカーンです。
カール・アイカーンは、1980年代にタバコ・食品大手のRJRナビスコへの敵対的な買収を仕掛け、コーポレート・レイダーと呼ばれています。
カール・アイカーンもハーバライフ株を大量に保有して、ビル・アックマンを狙い撃ちしているのが明白でした。
またビル・アックマンの自意識過剰ともいえる態度が気に入らなかったらしいです。
ビル・アックマンとカール・アイカーンがテレビ番組の電話出演でカール・アイカーンは、「昔、アックマンという輩がある株式をうまく処分できないからといって泣きついてきたことがあった。自分はニューヨークのクィーンズの荒れた学校に通っていたが、そのときいつも校庭でナイルユダヤ人の子供がいた。アックマンはそんな子供みたいだ。」と口撃した。
ビル・アックマンは怒りを抑えましたが、差別とも捉えかねない発言に不快感がありました。
ビル・アックマンは劣勢に立たされているが勝負は今も終わっていない
ビル・アックマンはダニエル・ローブとカール・アイカーンについて、「自分をショートスクイーズさせようとしている。」と批判しました。
ショートスクイーズとは、損失を覚悟で空売りをしていたポジションの買い戻しを追られることを言います。
十分な企業分析もせず、ライバルが自分を狙い撃ちしているという思いがあったのです。
そして2016年4月時点の株価は、58ドル台を付けておりビル・アックマンは劣勢に立たされました。
ですが最近では、金融当局がハーバライフのビジネスについて調査が入ったと言われているが、アクティビスト同士の対決の結果はまだ出ていないです。
投資家とは企業価値の向上に投資するはずが、今回の件で投資家への違和感が出始め企業や市場を混乱させています。
これは投資家として間違っていない行為なのかはわからないまま疑念だけが残ります。
心から尊敬している投資家ウォーレン・バフェット
ビル・アックマンにも心の底から尊敬している投資家がします。
それがデビット・アインホーンと同じウォーレン・バフェットです。
60年にも渡る運用実績があり、レバレッジに頼ることがなく、平均で20%を超える投資収益を出しているウォーレン・バフェットです。
またジョージ・ソロスも偉大な投資家だと言いますがビル・アックマンは、「英ポンドの空売りで成功するなどは世界には何にも貢献していない。ウォーレン・バフェットは個別企業の買収でも実績を上げ、取締役報酬やデリバディブの膨張にも歯止めをかけてきた。」と語りました。
ビル・アックマンは、100年前の資本主義を蘇らせようとしている英雄主義を漂わせ、株主が強かった時代になるように目指し、それに向かって妥協をしていないのです。
そして、自らの投資を世直しと考えています。しかしその思いはほとんどの人が理解されないままです。周りから見るビル・アックマンは、誰の声にも耳を貸さない独善的な態度は経営陣だけのみならず、市場などでも非難の声が飛び交っている。
ウォーレン・バッフェットのように周りから尊敬され、自身の考えが理解される日がやってくるのでしょうか。
まとめ
- 2002年〜2008年の6年間空売りし続けたMBIAとの戦い
サブプライムローンを含んだ不良債権がMBIAを追い込み勝利を収める - ハーバーライフの空売りで立ちはだかる2人の投資家
ビル・アックマンに買いで挑むダニエル・ローブ
勝負を挑むもう一人の投資家カール・アイカーン - 心から尊敬している投資家ウォーレン・バフェット