ウォーレン・バフェットから学ぶ投資の心得『財務に関する原則から考える銘柄選択』

ウォーレン・バフェットから学ぶ投資の心得『財務に関する原則から考える銘柄選択』

ウォーレン・バフェットが企業の業績を評価するときに使う財務に関する原則は、いかにもウォーレン・バフェットらしい基準に基づいています。

ウォーレン・バフェットは、1年ごとの業績をあまり気にしません。見るのは5年平均です。

高い収益性も、太陽の周りを回る地球の動きといつも同じになるとは限らないと言います。

また、期末の数字は素晴らしく見えるが、実態は何もないという、会計上のカラクリも容赦しません。

そこで今回は、銘柄選択(株式投資)をする際、ウォーレン・バフェットが考える、財務に関する原則をご紹介します。

前回お伝えしたウォーレン・バフェットから学ぶ投資の心得『事業に関する原則から考える銘柄選択』と合わせて、銘柄選択に活用してください。

1株あたり利益(EPS)ではなく自己資本利益率(ROE)を上げようとしているか

アナリストは、企業の年間業績を1株あたり利益(EPS)で判定するのが一般的です。

前年より増えているか?予想を上回っているか?高い水準か?で比較します。

 

1株あたり利益(EPS)は本来の実態が見えにく

ウォーレン・バフェットは1株あたり利益(EPS)は、実態をごまかすようなものだと考えています。

多くの企業は資本増強のために、前期の利益の一部を内部で保留します。よって、1株あたり利益(EPS)が最高になったと聞いても、ウォーレン・バフェットは気にしません。

1株あたり利益(EPS)が10%上昇しても、同時に自己資本も10%増加していたら、実質は何も変わらないからです。銀行口座に預金して、わずかな金利を稼ぐのと変わりがありません。

それよりも、企業の業績を判断するには、自己資本利益率(ROE)を見るのが良いです。

 

自己資本利益率(ROE)の正しく判断する

1・有価証券は市場価格ではなく、原価で評価します。

市場価格ですと、株式市場全体の価値が個別企業の自己資本利益率に影響を与えてしまうからです。

例えば、1年で株式市場が急上昇した場合、企業が素晴らしい業績を上げても、大きく上昇した市場と比較すれば、その業績は見えなくなります。

逆に、市場の株価が下落すれば、ありきたりの業績でも、実態よりよく見えてしまいます。

 

2・通常発生しない項目を考慮して利益を見る必要があります。

ウォーレン・バフェットは資産売却損益や特別損益を除いた営業損益で考えます。事業そのものの実績を切り出して見たいからです。

与えられた資本を使って、経営者が事業で利益を生み出せたかどうかを知りたいのです。

それこそが経営やの実績を判断する最良の指標だと言います。

 

借入金に頼らず自己資本比率が高いかを見る

ウォーレン・バフェットは、借入金に頼らずに高い自己資本利益率(ROE)を達成するべきだと考えています。

負債の比率を高めれば、自己資本利益率(ROE)を上げることができるのはよく知られています。

事業や投資の判断が正しければ、借入金の助けを借りなくても、十分満足できる成果を上げることができる。

しかも、借入金が多い企業(自己資本比率が低い)は、景気が悪化する局面で不安定になります。

たとえ収益性が低くなっても、借入金の増加によるリスクで、株主の利益を損なうよりはマシだと考えています。

 

企業は資産と負債を別々に管理すべき

ウォーレン・バフェットは借入金を病的に嫌っているわけではありません。本当に必要になってから借りるよりも、先を見越して借り入れたほうがよいと考えています。

企業を買収したいときに資本があるのが理想ですが、過去の経験では、その逆がしばしば起こります。

低金利で借り入れが可能なときは、買い物の価格が高くなりがちで、資金受給がタイトで金利が高いときは、買い物の価格が下がります。

買収したい企業の価格が安いときには、金利が高く、チャンスも旨みがなくなってしまうのです。

だから、企業は資産と負債を別々に管理すべきだとウォーレン・バフェットは指摘しています。

ただし、優良な企業は借入金なしで十分な自己資本利益率(ROE)を上げることができるはずだということも忘れてはいけません。

借入金に頼って高い自己資本利益率(ROE)を上げている企業は、疑ってかかるべきです。

 

オーナー利益を考えているか

オーナー利益とは、純利益と減価償却費から設備投資と予想される追加運転資金を差し引いたものです。

ただし、オーナー利益は、アナリストが欲しがるような正確な数字ではないとウォーレン・バフェットは認めています。将来の設備投資額は推定でしかないためです。

それでも厳密に計算して間違うよりも、おおまかにだが、正しいほうがよいと考えています。

 

利益の生じ方はどれも同じではない

利益に対して資産規模の大きな企業の利益は、つくりものである傾向があります。

資産が大きい企業は、インフレによって負担を負わされることになるので、そのような企業の利益は蜃気楼のように実態がありません。

会計上の利益は、企業の予想キャッシュフローを計算するアナリストにとって役立つものにすぎません。

 

キャッシュフローは設備投資が考慮されていない

キャッシュフロー分析が役立つのは、初期投資が大きく、その後の追加支出が少ない企業の場合だけです。不動産、ガス田開発、電話などの事業です。

一方、継続的に設備投資が必要な製造業では、キャッシュフローだけを見ても正しい価値を把握できません。

キャッシュフローは、税引後の純利益に、減価償却費とその他の現金支出を伴わない費用を加えたものと定義されます。

この定義の問題は、設備投資という重要な項目が考慮されていないところだと、ウォーレン・バフェットは言います。

現在の業界内の位置や生産量を維持するために、今年の利益のうち、どれだけを機械設備のメンテナンスや工場の改善などに使わなければならないかという点です。

ウォーレン・バフェットによれば、米国の企業のほぼ全てが、減価償却費と同じ程度の設備投資をする必要があると言います。1年程度は先延ばしにできますが、必要な設備投資を行わなければ、長期の間に企業は必ず衰退します

設備投資は人件費や水道光熱費と同じように必要なのです。

 

常に利益を上げる努力を惜しまない企業か

ウォーレン・バフェットは、経営者に売上を利益に結びつける能力がなければ、優良企業への投資でも散々な結果に終わることを理解しています。

利益を上げることに難しい秘密はなく、コスト管理が全てなのです。

ウォーレン・バフェットの経験上、高いコストに慣れた経営者は、コストを増やす方法を考え、低コストで事業を行う経営者は、コストを削減する方法を見つけてくるものです。

 

コスト削減はリストラではない

ウォーレン・バフェットは、コスト上昇を放置するような企業に絶対投資しません。

そのような企業の経営者がコスト削減のためのリストラを安易に計画し、売上に見合ったコストにしようとすることがよく怒っています。

企業がコスト削減計画を発表するたびに、ウォーレン・バフェットは、その経営者が株主にどんな影響を与えるか理解していないことを知るのです。

本当に優れた企業の経営者は、朝目を覚まして、今日こそはコストを削減するぞと思ったりはしない。それはまるで、目を覚まして、今日こそ息をするぞと言うようなものだ。

 

1ドル利益を保留したら企業の市場価値も1ドル以上あがるように心がけているか

株式市場は、おおまかに言えば、企業の価値を反映していると言えます。

例えば、長期的に良好な展望がある企業があり、株主のことを考える経営者にその企業を任せれば、市場における企業の価値は上昇していくとウォーレン・バフェットは考えています。保留利益についても同じだと言います。

保留利益を長期間無駄に使うと、市場は次第に株価を低く評価するようになります。逆に、与えられた資本で平均以上の利益を達成した企業は、株価が上昇する形で市場が評価します。

長期的に見れば、株式市場が価値を正当に反映しているのは確かですが、ある1年だけを見ると、価値以外の理由で株価が大きく変動することがあります。

そこで、ウォーレン・バフェットは、企業の経済的な価値と経営者の目標達成度を素早く判定する指標を編み出しました。

それが1ドルのルールです。

保留利益1ドルに対して、市場における価値は1ドル以上上昇していなければならないというルールです。

ウォーレン・バフェットは「株式市場という巨大なオークションで、利益を1ドル保留すれば、株価を1ドル以上上昇させることのできる企業を選び出すのが、私たちの仕事だ」と語りました。

 

まとめ

  • 1株あたり利益(EPS)ではなく自己資本利益率(ROE)を上げようとしているか
    1株あたり利益(EPS)は本来の実態が見えにく
    自己資本利益率(ROE)の正しく判断する
    借入金に頼らず自己資本比率が高いかを見る
    企業は資産と負債を別々に管理すべき
  • オーナー利益を考えているか
    利益の生じ方はどれも同じではない
    キャッシュフローは設備投資が考慮されていない
  • 常に利益を上げる努力を惜しまない企業か
    コスト削減はリストラではない
  • 1ドル利益を保留したら企業の市場価値も1ドル以上あがるように心がけているか

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