デビット・アインホーンから学ぶ投資の心得『アップル、りそな買いと長期間の金融緩和への警鐘』
有力ヘッジファンド、グリーンライト・キャピタル創業者。
2008年9月に破綻したリーマン・ブラザーズの経営不振を見抜いた、空売りの旗手。
買い物の手掛け、アップル株を長期保有している。
96年にファンド設立以来の運用利回りは年率約20%。
14年にりそなホールディングスへの投資を明らかにするなど日本市場への関心を高めている。
投資銀行からヘッジファンドそして独立 デイビット・アインホーンの経歴
デビット・アインホーンは1968年に生まれ、ウィスコンシン州ミルウォーキー郊外で少年時代を過ごしました。
高校では討論クラブで物事を考え、討論するやり方を学びます。
大学は名門のコーネル大学に進み、政治学を専攻します。
そこで経済にすごく興味を持ち、91年に大学を卒業します。
そして、ウォール街の投資銀行ドナルドソン・ラフキン・アンド・ジェンレットに就職します。
投資銀行を辞め中堅ヘッジファンドへ
誰もが羨む就職先ですが、現実は過酷でした。
上司から雑用を押し付けられたりと、馬車馬のようにこき使われ、三ヶ月で7㎏も減りました。
それが毎日あり嫌気がさして、入社して2年で退社しました。
ですが、中堅のヘッドファンドに転職し、投資家としての道を開きます。
そこで、分析する基礎、企業の見分け方、会計処方の違いなどの基礎を学んでいきました。
ヘッジファンド設立以来驚異の投資収益を記録する
27歳で知識をつけたデビット・アインホーンは同僚とヘッジファンドを立ち上げました。
立ち上げて1997年には、58%という高い投資収益を記録し、さらには2000年のITバブルもしのぎ、2008年にはリーマンに勝利しました。
そしてすごいことは設立して以来、あらゆる難局がありましたが2013年まで平均利回り19.5%のリターンを叩き出しています。
家庭を大事にするポーカーフェイスのポーカー名人
デビット・アインホーンは投資以外の面でも違う顔を持っています。
贅沢な生活をせず、毎日電車通勤でオフィスに行き、早く仕事を済ませ、家族との時間を大切にしています。
子供と9時に就寝し、午前3時に起きて自宅で仕事をする日々を送っています。
家族と一緒に過ごせる時間を作り、仕事もちゃんとこなすことはすごいことです。
また、デビット・アインホーンは投資家として有名ですが、他の分野でも有名です。
それが、ポーカーです。
なんと、2012年の世界最高峰のポーカーの大会で自己最高の3位に入り、400万ドルの賞金を手に入れてます。それを全て慈善事業に寄付しています。
なぜポーカーが強いのかは、アインホーンは普段感情を表に出さず、相手の考えていることを読む力があり、数学的な能力がポーカーで発揮できたからです。
名前にちなんで作られた相場用語『アインホーンされる』
デビット・アインホーンは今では米市場で影響力のある人物になっています。
空売りでは、セイント・ジョーに続き、毎年のように空売りの標的を見つけています。
その標的となったグリーンマウンテン・コーヒー・ロースターズやチポトレ・メキシカン・グリルなどアインホーンが「株価は割高だ」と言うと、名指しされた企業の株価は急落してきました。
それほど影響力があり、ウォール街ではこんな相場用語が流行りました。
それが「アインホーンされる」です。
これは、デビット・アインホーンが名指しされた企業の株価が必ず下がるという意味である。
空売りへの非難の声も返り討ちにする力を持つ
空売りの発言に反対する者もおり、デビット・アインホーンが発言により自身で相場を操っているのではないのかと非難の声がでました。
ですが、デビット・アインホーンは「自分の発言で操作して利益を得ようと思っていない。投資のアイデアをむやみに追いかけても意味がなく、自分で考えて行動をすべきである」と反論しました。
そして、公の場で具体的なデータを示して説明しました。
本来なら真似をして欲しくないので開示はしないものです。
デビット・アインホーンは開示します。
なぜなのか。それは秘密にしておく理由がひとつもないと言います。
隠し事をなくし、透明性を重視していことで自らを高めていきます。
それは、信頼性などに大きく関わり、今でもデビット・アインホーンは表舞台に立ち続けています。
空売りだけではない投資法「アップルへの投資」
ここまでは空売りばかりを紹介しましたが、デビット・アインホーンは買いもします。
デビット・アインホーンは、「アップルがモトローラやノキアの二の舞になるとは思えない」と言い放ち、アップルに多額の資金を投資しています。
2014年3月末の時点で10億ドルのアップル株を保有しています。
iPhoneなどを販売するアップルは繁栄が続くと判断
人気となったiPhoneなどが、長期に渡って繁栄が続くと読み、2010年にアップルへ投資をしました。
しかし、2012年9月にアップル株価が下落しました。
当時はアップル株は人気の銘柄で投資をしている人が多かったですが、株価が下落したことによって撤退するファンドが続出しました。
ですが、デビット・アインホーンは違います。
逆にアップル株の持ち高を増やしたのです。
これはデビット・アインホーンの分析と企業の価値を見極めたことによって、アップル株の買い増しを決断したのです。
大企業アップルへ物申せる力も持つデビット・アインホーン
アップル株を買い増した頃を境に、デビット・アインホーンはアップルに具体的な要求をするようになり強気になりました。
アップルは稼ぐ力があり、勝手に現金が積み上がっていきます。
その眠ったままの巨額な資金を低迷する株価の起爆剤にしようと考えました。
アップルに2013年に入ってから繰り返し株主還元の強化をするように要求しました。
そして遂に、4月に10000億ドルを株主還元策を発表します。この発表で、多くの市場関係者はデビット・アインホーンの圧力にアップルは屈したと広がりました。
「株主は黙っているべきだ。経営に納得できないなら売って処分すればいい」と言う声も出ることがありましたが、これに対しデビット・アインホーンは、「その通りだ。自分もすることはある。ただ時々、経営者に提案することもある。資本の配分が誤った方向にいけばなおさらだ」と言い、企業価値の向上するように示しています。
デビット・アインホーンは近年の上昇相場を警告している
ダウ工業株30種平均は2013年だけで26%上げ、95年以来18年ぶりの高い伸び率を記録しました。
株式市場がかつてない水準まで引き上げられ、2014年7月には初めて1万7000ドルを突破し、2015年には1万8000ドルに達しました。
この時デビット・アインホーンは、上昇相場を警戒していました。
なぜかと言うと、金融危機の混乱から立ち直り、景気が拡大期に入って5年以上がたち、収益の拡大ペースも徐々に鈍ってきている中株式相場だけが上がり続けるということは考えられないからです。
新規株式公開ブームにも警戒している
さらに気になっているのが、新規株式公開ブームです。
利益が出ることが難しい新興企業が、市場では高値で取引されています。
これは株価が上がった企業に片っ端から投資するタイプの投資家が、実態を無視して買いが買いを呼ぶ展開になっているからです。
これにはデビット・アインホーンは理解出来ないことでした。
空売り投資家にとっては辛く、「上がるから買う、買うから上がる」の展開では空売りを下手にすれば大やけどをするからです。
これを見てデビット・アインホーンは、「混乱していない者は、本当に状況を理解していない」と言い、止まらない株高に違和感を抱く思いがある言葉です。
長期間続く金融緩和に警鐘を鳴らす
デビット・アインホーンは、長期間金融緩和を続けたFRBを批判しています。
リーマンショックによる金融危機後にFRBが国債や住宅ローン担保証券を買い取る量的緩和を決め、金融市場の信用不安を和らげました。
ここまでは良かったのですが、問題は次にあります。
2012年に量的緩和第3弾を決め、その後も緩和を続けました。
2013年末には緩和縮小を決めましたが、金融緩和の長期化が市場に歪みをもたらしました。
これは、景気を与えるどころか、暮らす人々にとって弊害が目立ちます。
なぜかと言うと、長引く低金利は老後のために積み上げてきた利息収入が無くなり、その結果退職時期を遅らせたり、老後のために今の生活を切り詰める人々が増えてきたからです。
デビット・アインホーンは、FRBが今すべきことは、金利を適正な利率へ戻し、金利上昇で預金者に報いることだと考えました。
金融危機後は、FRBの緩和政策で良くはなりましたが、長期になると弊害が出てしまいます。
そこから抜け出すにはリスクが大きいことがわかります。
2014年にりそなホールディングスへの投資を開始
2014年4月、東京に衝撃が走りました。
デビット・アインホーン率いるグリーンライトの恒例となっている新規に投資する銘柄に、りそなホールディングスが含まれていたからです。
そして、この報道でその日のりそなホールディングスの株価が2.5%上がりました。
りそなホールディングスの収益率の高さとPBRの低さで投資を決めた
なぜデビット・アインホーンが、りそなホールディングスに投資することを決めたのか。
それは、りそなホールディングスは前年に、公的資金を2017年までに完済すると公表し、そのペースが想定よりも大幅に前倒しになっていたので収益率が高いと思ったことや、PBRは0.8倍前後と1倍を下回り日本の同業他社と比べても株価は割安だと言い、投資を決めます。
デビット・アインホーンは日本全体への投資に強気ではない
今回デビット・アインホーンは、りそなホールディングスに目を向けたが日本全体には強気ではありません。
それは、ハイパーインフレによる通貨の急落を避けるのは難しいと考えているからです。
1980年代後半からのバブル崩壊後、海外では日本売りを加速させました。
それにデビット・アインホーンも加わっていたのです。
月日が流れ、2012年末に安倍首相はアベノミクスを掲げ、デフレ脱却を試みました。
そして、日銀の黒田総裁が2013年4月に金融緩和を打ち出すと、円相場が急落しました。
ついに2014年5月には1ドル=100円を突破し、その結果一先ずはデビット・アインホーンに恩恵をもたらしました。
その後も続く日本の金融緩和がどのように影響するのか?
長期の金融緩和へ警告をしていたデビット・アインホーンが、日本の金融緩和をどう思うか?
デビット・アインホーンは日本全体へは強気ではない、ということは頭の片隅に置いておかなければなりません。
まとめ
- 投資銀行からヘッジファンドそして独立 デイビット・アインホーンの経歴
投資銀行を辞め中堅ヘッジファンドへ
ヘッジファンド設立以来驚異の投資収益を記録する - 名前にちなんで作られた相場用語『アインホーンされる』
空売りへの非難の声も返り討ちにする力を持つ - 空売りだけではない投資法「アップルへの投資」
- デビット・アインホーンは近年の上昇相場を警告している
新規株式公開ブームにも警戒している - 長期間続く金融緩和に警鐘を鳴らす
- 2014年にりそなホールディングスへの投資を開始
- デビット・アインホーンは日本全体への投資に強気ではない