戦争でバブルが発生?『日本で戦争が起きた時のお金と株価の歴史』
『戦争とは他の手段をもってする政治の継続である』
軍事学者クラウゼヴィッツの「戦争論」で述べられた言葉です。
すなわち戦争とは政治の延長線上であり、経済活動でもあるわけです。
戦争によってお金や株式市場は大きく動きます。
はたしてそれは上がるのか?下がるのか?
過去の歴史を見てみましょう。
日本は平和な時代が長く続いているが戦争は常にどこかで起こっている
戦争と経済、そして株価には密接な関係があります。
世界の歴史を見てみれば、世界中が平和な時代などありません。
現在もシリアなどでは長い間戦争が続いています。
この先私たちが生きている間に日本が巻き込まれないと限らないのです。
また、日本が戦争に巻き込まれなかったとしても、グローバルな時代になり世界経済は様々なところで繋がっているので決して無関係とは言えません。
長期投資を実践する場合は、戦争は避けては通れない問題です。
株価を3.5倍跳ね上げた軍需企業
昔とは違い現代の先進国であれば、国民生活を犠牲にするような戦争はほぼ実施されません。
ですので、もし戦争が起こったからといって株価が極端な動きを見せることはあまりないと考えて問題はないと思います。普段と比べると動くでしょうが。
しかしこれはあくまでも株価全体を見た話で、個別銘柄では特徴的な動きが見られます。
戦争で大きく動く銘柄は軍需銘柄です。
米国や欧州などは、企業の役割分担や合理化が進んでいるため、防衛関係の企業は基本的にその分野だけの業務を行っています。
日本や新興国では財閥系の会社があらゆる業務を手がけるケースが多く、軍需産業も財閥グループ会社が手がているケースが少なくありません。
日本の軍需企業
日本は軍需専門の企業はありませんので、米国や欧州のようにダイレクトに影響する銘柄はありませんが、関連性が深い銘柄はあります。
特に影響すると思われる銘柄は三菱重工(7011)です。
- 総合重機首位
- 火力発電所用ガスタービン
- 原発
- 航空
- 防衛
- 造船
- 産業機械
米国の軍需企業は数多くありダイレクトに影響する
米国の場合は、ロッキード・マーチンやレイセオンなど軍需専門の企業が数多くあります。
こうした企業の株価は戦争との関連性が高く戦争が起こると上がりやすい傾向があります。
ロッキードマーチン
ロッキードマーチンは軍用航空機製造の大手企業です。
米軍の最新鋭ステルス戦闘機などを製造しています。
売り上げの約80%を米国政府に依存しており、米国の軍事支出の影響を大きく受けます。
レイセオン
レイセオンはミサイル防衛システムや軍用レーダーなどを製造する企業です。
売り上げのほとんどを米国政府に依存しており、パトリオット・ミサイルやトマホーク・ミサイルなど、米軍の主要なミサイルの多くは同社によるものです。
9・11テロ発生後株価が急騰しました
2001年に発生した9・11テロが発生した後、株価が急騰しその後一旦下落しますが、イラク戦争が本格化するにつれて再び上昇し始め、ロッキード・マーチンは最大3.5倍まで跳ね上がりました。
この間のダウ平均株価はほぼ横ばいでしたので、軍需関連銘柄のパフォーマンスの高さは際立っています。
歴史上で日本が関わった戦争時の株価はどうだったか
日清戦争・日露戦争
日清戦争・日露戦争の発生前後には、国内の株式市場においてかなり大きいバブルが発生しました。
日清戦争では下関条約で戦勝が確定してから、日露戦争では日本海海戦の勝利など、戦況が好転していくにつれて株価が高騰していきました。
日露戦争の時には株価が約8倍まで高騰し多くの富豪が誕生しました。
現在と比べると日本の株式市場は圧倒的に資金の厚さが違いますから(現在の方が株価は高い)当時と比べるのは間違っているかもしれませんが、こうした大きな戦争があると投資家の心理はかなり高騰することが知られています。
太平洋戦争
日本が最もお金と株価に影響を与えた戦争は、学校の授業で必ず学習する太平洋戦争(第二次世界大戦)です。
日清戦争・日露戦争は日本が勝利しましたが、太平洋戦争では日本が敗北し、日本の国家が崩壊してしまう寸前まで追い込まれた戦争でした。
日清・日露戦争と太平洋戦争は資金調達方法が違った
日清・日露戦争で費やした戦費は太平洋戦争と比べると遥かに低く抑えられ、さらに豊かな日本国民からの税収や日清戦争での賠償金を利用するなど、とても合理的でした。
それに比べ太平洋戦争は、財政的な裏付けは全く持たず、まともな戦略も立案せず、なし崩しに行われました。
※太平洋戦争は米国による日本への強制的で強引な制裁を受けたため遂行せざるを得ませんでした。
日中戦争と太平洋戦争に費やした経費の総額は、当時の金額で約1900億円といわれています。
当時の国家予算が27億円程度ですから、国家予算の70倍を超える天文学的数字が費やされました。
※この経費の中にはアジアの占領地域に設立された日本の国策金融機関が現地通貨を直接発行して用立てた経費が含まれています。
さらにこの戦費は日銀による引き受けで無限に資金を引き出し遂行されたため、結果として日本はハイパーインフレになってしまいました。
太平洋戦争の最中は意外にも株式市場は堅調に推移していた
無謀ともいえる太平洋戦争の最中、日本の株式市場は意外にも、平穏にしかも比較的堅調に推移していました。
その理由は国家による経済統制です。
経済統制とは企業や市場に国家が介入すること
日本政府は1938年に国家総動員法を制定し、国内の経済活動のほとんどを国家の統制下におきました。
あらゆる企業が政府の計画のもとに生産活動を行うようになり、企業系列が国家によって強制され、同時に終身雇用制度が義務付けられ、賃金も政府によって決定されるようになったのです。
日本の伝統だと思われていることが多い終身雇用はこの時、政府から強制されたのです。
また、物価統制が行われ、インフレが進んでいるにもかかわらず、生活必需品については価格の上昇を抑えました。
これでは企業の利益が上がらないのですが、こうした企業は政府が利益を補填していたのです。
しかし、このような状況では経済が停滞してしまいますので、株を買う投資家は減ってきます。
政府はここでも市場が暴落しないように、証券市場にも統制を加えることになり、国が設立した機関が株を買い支え、株価を維持したのです。
日本の証券市場にはPKO(価格維持政策)という言葉がありますが、実はこの時代に始まったのです。
実際に政府による買い支えが行われた時、株価は上昇しています。
国家の政策に逆らうなという言葉がありますが、現代の世界各国での金融緩和にも言えることでしょう。
こうした政府の対策もあり、太平洋戦争中での株価は大幅な下落もなく、株価だけ見れば上昇を続けていました。
しかし、現実の経済はインフレが大幅に進んでおり、たとえ株式市場が堅調に推移していてもインフレを上回ることはできず、最後は事実上の休眠状態で終戦を迎えました。
戦時中の株価は戦況に応じて推移する
戦時中、日本では情報規制が厳しくなっており、正確な戦況が報道されませんでしたが、株式市場は事実の戦況を反映した動きをしていました。
様々な情報が規制されていましたが、日本の戦況が悪い時、例えばガダルカナル島からの撤退などの出来事があった前後では、株価はマイナスに動きました。
このような株式市場の不思議な動きは現代においても侮ることはできません。
まとめ
- 昔とは違い大規模な戦争は起こりにくい
- 軍需関連企業の株価は上がりやすい(特に米国や英国)
- 日本の軍需関連銘柄は三菱重工(7011)
- 米国の軍需関連銘柄はロッキード・マーチンとレイセオン
- 日本が勝利した戦争時はバブルが起きた
- 日本が敗戦した戦争時は大規模なインフレが起きた
- 戦時中は戦況に応じて株価が推移しやすい