グローバル・スタンダードを築いた新自由主義の歴史と事実上の崩壊
現代では当たり前のようになったグローバルな資本主義。
これにより、国境を越えたお金とモノが自由に世界中を駆け巡っているのです。
グローバル化が進むにつれて、世界経済は想像を超えるような成長を遂げましたがその反面、リーマンショックのような大規模な金融危機や所得の格差・貧富の差を生み出していることも事実です。
そこで今回は、新自由主義が誕生した歴史と、これにより日本がどのように変化したかを見ていきます。
新自由主義が現代のグローバル化を進めた
ソ連が崩壊した1991年頃から、世界中に新自由主義が広まっていきました。
新自由主義とは、『国家は企業や個人の活動に介入せず、規制緩和や市場原理主義を進め、全てを民間に任せるべき』という考え方です。
シカゴ学派が推し進め日本にも波及した
新自由主義の中心となったのが、ノーベル経済学賞受賞者のミルトン・フリードマンを中心とするシカゴ学派です。
徹底した自由主義を主張し、政府が不況の時に公共投資を増やして景気の落ち込みを抑制するケインズ理論を批判し、『政府が財政政策や金利政策を通じて経済に直接介入することは好ましくなく、政府の経済運営は通貨の供給量の調整によって行うべき』と主張しました。
日本でも、小泉政権時代に規制緩和や郵政民営化などの新自由主義的な政策が推進されたことは有名な話だと思います。
金融主導型資本主義が世界の中心となり動かそうとした
新自由主義はやがてグローバル主義と結びつき、世界中に広がっていくなかで、アメリカの投資銀行をはじめとするグローバル金融資本やIT業界などのグローバル企業が、国境を越えた経済活動を活発化させるようになっていきます。
そして、グローバル・スタンダードを世界共通ルールとするワン・ルール、ワン・ワールド化が進んでいき、アメリカ流の金融主導型資本主義が世界中を圧巻するようになっていきました。
グローバル企業はグローバル金融資本と行動を共にし、どんどんと巨大化します。
新自由主義はグローバル資本主義と結びつくことで、グローバル・スタンダードをワン・ルールと位置づけ、世界経済の中心となり、世界を動かそうとしていたのです。
日本でもグローバル化が進み資金が海外に流れる仕組みが作られた
1980年代の日本でも、グローバル化を進める活動が行われてきました。
その中心となったのは、アメリカ政府によるフルブライト交流事業でアメリカに留学したフルブライターと呼ばれるフルブライト留学生たちです。
彼らは、『日本はグルーバル化しなければ世界に取り残される』と主張を繰り返し、アメリカで学んだグローバルなルールやグローバル・スタンダードに従うべきだと強く主張する活動を行っていきます。
やがて、フルブライター達の力は増していき、グローバル・スタンダードが企業経営の中核となっていきます。
従来の企業携帯の典型だった株式の持ち合いなどが解消されたり、時価会計が採用されたりと、世界基準に基づく会計システムの導入がなされるようになったのです。
金融ビッグバンと呼ばれる金融システムの改革・開放により、銀行や為替をはじめとする広範囲な分野で金融自由化が実施されました。
外為法改正により資金流出する仕組みとなった
日本の金融システムは、世界の金融システムの一部となり、日本企業を海外企業が容易に買収できるようになり、日本の資金が海外に流れる仕組みができました。
かつての日本では、外為銀行の東京銀行(三菱東京UFJ銀行)が貿易金融や外国為替の国際金融業務を一手に引き受けていました。
1998年4月の外為法改正により、それまで外国為替公認銀行や指定証券会社など、認可された業者に限られていた外国為替業務は誰でもできるように(海外送金業務など、銀行法や証券取引法等の各業法の免許や登録が定める免許が必要なものもある)なります。
リーマンショック(金融危機)により新自由主義は事実上崩壊する
国家は企業や個人の活動に介入せず、すべて民間に任せるべきだと、1991年から推し進められてきた新自由主義は、リーマンショックを機に大きく勢いが衰えていきます。
アメリカの四大投資銀行は、政府の支援を得ないことと引き換えに自由な営業が許されていましたが、FRB(連邦準備制度理事会)の配下に入ることで、FRBからお金を借りられる仕組みが作られる(金融危機で救済された)と同時に、FRBの監督を受けることとなります。
すべての銀行に対してストレステスト(銀行の健全性を審査する)が実施され、資本不足に陥っていた銀行に資本供給が行われました。
こうなった以上、これは新自由主義とは呼べません。
形は変わったものの、新自由主義はリーマンショックを機に崩壊したと言っても過言ではありません。
まとめ
- 新自由主義が現代のグローバル化を進めた
シカゴ学派が推し進め日本にも波及した
金融主導型資本主義が世界の中心となり動かそうとした - 日本でもグローバル化が進み資金が海外に流れる仕組みが作られた
外為法改正により資金流出する仕組みとなった - リーマンショック(金融危機)により新自由主義は事実上崩壊する