ウォーレン・バフェットが勧める高利回りの長期投資法『ルックスルー利益と長期投資のメリット』
これまで3度にわたりフォーカス投資についてお伝えしました
- ウォーレン・バフェットが勧める高利回りの長期投資法『フォーカス投資の基本』
- ウォーレン・バフェットが勧める高利回りの長期投資法『数字で見るフォーカス投資の優位性』
- ウォーレン・バフェットが勧める高利回りの長期投資法『フォーカス投資を成功させるための心得』
そして、今回が最後『ルックスルー利益と長期投資のメリット』について考えてみたいと思います。
ルックスルー利益を生み出すポートフォリオをつくれば長期的に事業を見ようとする
ウォーレン・バフェットは、自分が正しいと考えることを市場がすぐに追認しなくても焦ったりしません。
「事業の成功が認知されるスピードは重要ではない。大切なのは、企業の本質的価値が納得できる割合で増加すること。認知されるのが遅れるのには良い面もある。良いものを安い価格で買うチャンスが長くなるからだ。」
とウォーレン・バフェットは語っています。
ルックスルー利益はフォーカス投資家にとって重要な意味を持つ
バークシャー・ハサウェイの巨大な株式投資の価値を株主が把握しやすくするために、ウォーレン・バフェットは、ルックスルー利益という言葉を作り出しました。
ルックスルー利益とは、連結営業利益と巨大な株式投資の保留利益、および保留利益を支払った場合に発生する税金のための引当金の合計です。
この用語は、当初、バークシャー・ハサウェイの株主のために考え出されたものですが、ポートフォリオの価値を判定する方法を探しているフォーカス投資家にとっても、重要な意味を持ちます。
株価はそれを裏付ける経済的な実態からときどき離れることがあるからです。
「投資家は、これから10年くらいの間に、最高のルックスルー利益を生み出すポートフォリオをつくることを目標にするべきだ」とウォーレン・バフェットは言います。
ルックスルー利益と株価の歩調は長期的に見ると合うが短期的に解離することがある
バークシャー・ハサウェイの経営を始めた1965年から、同社のルックスルー利益は株価とほぼ同じペースで上昇していますが、常に歩調を揃えていたわけではありません。どちらかが先行して上がったことがよくあります。
大切なのは、長期的に見れば、ルックスルー利益と株価の関係は確かにあるということです。
「このように取り組めば、投資家は短期的な市場の見通しよりも、長期的に事業を見ようとするようになる。そうすれば、投資成績も改善される可能性が高まってくる」
すでに保有している株式を基準にし、必要ならばポートフォリオを組み替える
ウォーレン・バフェットが追加投資を考えるとき、まず、すでに持っている株式をチェックし、それらよりも新しいものを買う方が良いか検討します。
現在保有している株式があるなら、新たな投資を検討する際のものさしになり、自在に使えるベンチマークをすでに持っているということです。
ルックスルー利益、自己資本利益率、安全なマージンなどを使って、自分流のベンチマークをさまざまに設定することも可能になります。
自分の保有株式を売買するとき、自分のベンチマークと比較しているのです。
証券を長期保有する意図を持ち、将来の株価が次第にその企業の実態に合ったものになると考えているポートフォリオ・マネージャーのやるべきことは、このベンチマークを上げる方法を見つけることなのです。
長期投資だからこそ最高の成績を上げられる
つまらない企業の株式を持っていたら、売る必要があります。平均以下の企業を長い間持つことはやめるべきですが、優れた企業の株式を保有しているなら、長期保有するべきです。
活発に売買することに慣れた人には、異論があるかもしれませんが、長期投資には平均を上回る率で資産を増やせることに加えて、2つの重要なメリットがあります。
取引コストを引き下げることと、税引後のリターンを引き上げることです。
取引コストは利益の足を引っ張る
シカゴの投資信託調査会社モーニングスターが、アメリカの3650の株式ファンドについて調査したところ、銘柄入れ替えの少ないファンドのほうが、頻繁に入れ替えるファンドよりも高いリターンを生み出していました。
10年の期間で調査した結果、回転率が20%より低いファンドは、回転率が100%より大きなファンドよりも14%も高いリターンを得ていました。
これは常識的な実態なのですが、当たり前すぎて簡単に見過ごされてしまっています。
回転率が高いことの問題は、取引に伴って手数料がかさむことを意味し、それによって利益が引き下げられます。
税金は利益を確定した時点で発生するが売らなければ発生しない
株式投資による税金は、取引手数料よりも高く、ファンド運営費用より高くなることも多いのです。税金はファンドの成績が上がらない大きな要因になっています。
しかし、ここにも見逃されている常識があります。それは、含み益の大きな価値です。
株価が上昇しても、売却しなければ、価値の上昇は未実現利益です。株式が実際に売られるまで、その利益に税金はかかりません。
含み益をそのままにしておけば、資金は複利で一層増加するのです。
一般的に、投資家は含み益の大きな価値を過小評価しています。ウォーレン・バフェットは、これを「政府が提供してくれるゼロ金利の融資」と表現しているほどです。
具体的な例を数字で表してみます
1年で2倍になる投資を1ドル行います。最初の年の終わりに売却すると、税率34%の場合、税引き後で0.66ドルの利益が出ます。
元手と利益の合計1.66ドルで同じ投資を行うと、この投資は毎年2倍になり、毎年売却して税金を支払い、手元に残った資金を投資し続けると、20年間に、1万3000ドルの税金を支払い、税引き後の利益2万5200ドルを得ます。
一方、同じ投資をして20年間売らずにいたら、税金35万6000ドルを支払い、税引き後で69万2000ドルの利益を得ることになります。
回転率を抑えれば利益を最大化できる
税引き後で高いリターンを達成するには、ポートフォリオの年間回転率を0〜20%に抑えるべきなのです。
低い回転率にピッタリくるのは、回転率を抑えたインデックスファンドとフォーカス投資です。
フォーカス投資家として成功するには市場よりも企業をよく知ることである
フォーカス投資家としての目標は、誰よりも企業について理解しているレベルに到達することです。それは現実的でないと思うかもしれませんが、株式市場が毎分毎秒のように発信する、莫大な量の情報を知ることに比べると、恐れるほど難しいことではありません。
真剣に企業を調べる意欲があれば、長い間には、株式を保有する企業について、普通の投資家よりも深く理解できるようになる可能性が高いでしょう。
投資家の中には、保有している企業が発信している情報よりも、株式市場がどうなっているかを調べる方が好きな人もいます。
しかし、株式市場の今後や金利の動向を何日もかけて調べるより、投資している企業からの最新の報告を30分調べる方がはるかに有益です。
フォーカス投資の5カ条
- 企業の一部を所有するつもりで株式投資に取り組めないのであれば、株式市場に近づいてはいけない。
- 所有する企業と同業他社を徹底的に研究し、そのビジネスについての第一人者になること。
- 5年あるいは10年間投資するつもりでなければ、ポートフォリオを組んではいけない。
- 借入金でフォーカス投資を行ってはいけない。
- フォーカス投資家には、それに適した特性や性格があるという現実を受け入れること。
まとめ
- ルックスルー利益を生み出すポートフォリオをつくれば長期的に事業を見ようとする
- ルックスルー利益はフォーカス投資家にとって重要な意味を持つ
- ルックスルー利益と株価の歩調は長期的に見ると合うが短期的に解離することがある
- すでに保有している株式を基準にし、必要ならばポートフォリオを組み替える
- 長期投資だからこそ最高の成績を上げられる
- 取引コストは利益の足を引っ張る
- 税金は利益を確定した時点で発生するが売らなければ発生しない
- フォーカス投資家として成功するには市場よりも企業をよく知ることである