ウォーレン・バフェットから学ぶ投資の心得『事業に関する原則から考える銘柄選択』
ウォーレン・バフェットにとって、株式は事業を抽出したものです。
株式市場の理論、マクロ経済、セクターのトレンドなどとは関係がなく、企業が行っている事業に基づいて判断をするだけです。
事業の本質ではなく、表面的な情報に乗って株式投資をする人は、よくない兆候が出ただけで怖くなって逃げ出し、多くの場合、その過程で損をするとウォーレン・バフェットは考えています。
一方、偉大なる投資家ウォーレン・バフェットは、検討している企業の事業に頭を集中させます。
そこで今回は、銘柄選択(株式投資)をする際、ウォーレン・バフェットが考える、事業に関する原則をご紹介します。
シンプルで理解しやすい事業を行っているか
投資家が自分の投資内容をどれだけ理解しているかで、成功するかどうかが決まるとウォーレン・バフェットは考えています。
ビジネスに軸足を置く投資家が、短期売買で利益をさらっていく人々とは違うことをはっきり示すために考えなくてはいけません。
ウォーレン・バフェットは投資する企業のあらゆる面を理解している
長い投資家人生の中で、ウォーレン・バフェットは多種多様な分野の企業に投資をしてきました。
その中には、完全に経営を支配(買収)した企業もあれば、少数株主に留まっている企業もあります。
ウォーレン・バフェットは、どのような(大小関わらず)投資をしていても、その企業の事業がどう運営されているかをしっかりと見ています。
ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイが所有するすべての企業について、売上高、費用、キャッシュフロー、労使関係、価格の柔軟性、資本配分など、あらゆる面を理解しています。
ウォーレン・バフェットがバークシャーの事業を常に深く理解できている理由は、彼の資金と理解力の及ぶ範囲に投資対象を意図的に絞り込んでいるからです。
ウォーレン・バフェットの考え方には説得力があります。企業あるいは株式を所有していても、その企業の属している産業を十分に理解していなければ、事業展開の是非を判定できず、正しい意思決定は行えないのです。
知っていることを増やすより知らないことを減らす
投資の成功という点から言えば、どれだけ知っているかよりも、自分がどれだけ知らないかをはっきりさせ、それを減らすほうが重要です。
「自分の能力の範囲で投資しなさい。その範囲が大きいかどうかは問題ではない。境界をどれだけはっきりと引けるかが重要だ。」
ウォーレン・バフェットはこうアドバイスしました。
事業実績は安定しているか
複雑なものに手を出さないウォーレン・バフェットは、非常に難しい課題を抱えている企業や、これまでの事業計画がうまくいかず、事業を大きく変えようとしている企業も対象から外します。
過去の経験から、同じ製品やサービスを長年提供している企業に投資すれば、最も高いリターンが得られることを知っているからです。
大きな事業転換は、ビジネス上の大きな間違いを犯すリスクが高い
ウォーレン・バフェットが長年の経験で得た結果は、「大きな変更を行うことと際立った投資利益を得ることは一致しない」ということです。
逆が正しいと勘違いしている投資家が多いのは不幸なことです。
多くの投資家は、大きく変化している産業に属する企業や、事業再構築中の企業に惹きつけられます。
「理由は全くわからないが、将来生まれるかもしれないことに夢中になって、目の前の現実を忘れてしまう投資家が多い」
こうウォーレン・バフェットは語っています。
昔から同じ事業で経営している企業に投資する
ウォーレン・バフェットは、市場で脚光を浴びている株式にほとんど興味を示しません。
興味を持つのは、長期的に成功すると自分で確信した企業への投資です。
将来成功することを予測するのは確実ではありませんが、着実に実績を積んでいきたことはある程度信頼できます。
長年、同じ種類の製品で安定した実績を上げている企業について、その実績が今後も継続すると考えることが重要なのです。
困難な局面に陥って株価が安くなっている企業より、好調で適切な価格の企業に投資する
ウォーレン・バフェットは、難局を乗り切ろうとしている企業にもあまり手を出しません。
経験上、企業の再生はうまくいかないことが多いと考えているからです。
難しい局面の企業を安く買うよりも、好調な企業を適切な価格で買うほうが大きな利益を得る可能性が高いのです。
「私は事業の難問を解決する方法を学んでいない。私が学んだのは、そのような企業に手を出さないことだ。私が成功してきたのは、2メートルのハードルを飛び越える能力があったからではなく、簡単に飛び越えられる30センチのハードルを見つけることに集中したからだ」
明るい長期展望が見込めるか
ウォーレン・バフェットはビジネスの世界を2つに分けて考えます。
非常に優れた少数の企業と、大多数を占める買う価値のない企業です。
非常に優れた企業には3つの条件があります。
- 社会で必要とされ、望まれる存在である
- 代わりになるものを簡単には見つけられない
- 政府の規制がない分野にいる企業
これらの条件が揃えば、販売数量が減少したりマーケットシェアを奪われたりすることを心配せずに、製品の価格を維持し、場合によっては引き上げることも可能です。
このような価格決定力は優れた企業が必ず備えている強みの1つであり、平均以上の資本利益率をもたらします。
優れた企業とは20年〜30年にわたって優れた状態でいる企業
「投資に対して高い利益を上げる株式を求めている。しかも、それが今後も続く可能性が高いというのが前提だ。私が関心を持つのは、長期的に競争力を維持していけるかどうかである。」
このような優れた企業は、他社とは明確に異なっており、簡単には参入を許さない優位性を作り出しています。
ウォーレン・バフェットはその優位性を、堀と呼びます。大きな堀があれば、競争力は強固になり、堀は大きほど良いのです。
「投資のポイントは、企業の比較優位性を判定することにある。その優位性をどれだけ維持できるかが特に重要で、深くて広い堀に囲まれた製品やサービスは投資家にリターンを生み出す。私が重視するのは、事業を取り囲む堀がどれだけ大きいかという点だ。大きな城を大きな堀が取り囲み、その中にピラニアとワニがいれば最高だ。」
汎用品事業から投資できる適切な銘柄を選ぶのは非常に難しい
競争相手の製品と区別がつきにくい、汎用品事業から、適切な銘柄を選ぶのは非常に難しいです。
汎用品事業とは、石油、ガス、化学、銅、木材、麦などが、昔から挙げらる分野です。
現在で言えば、IT、自動車、航空産業、銀行、保険なども加わります。
一般的にこれらの汎用品事業は利益率が低いのです。他社の製品と区別できなければ、価格で勝負するしかないため、利益率は下がります。
汎用品事業を成功させるためには、低コスト生産を実現するしかありません。それ以外で利益を出せるのは、需給がタイトな状況だけですが、その到来を予測するのは不可能です。
まとめ
- シンプルで理解しやすい事業を行っているか
ウォーレン・バフェットは投資する企業のあらゆる面を理解している
知っていることを増やすより知らないことを減らす - 事業実績は安定しているか
大きな事業転換は、ビジネス上の大きな間違いを犯すリスクが高い
昔から同じ事業で経営している企業に投資する
困難な局面に陥って株価が安くなっている企業より、好調で適切な価格の企業に投資する - 明るい長期展望が見込めるか
優れた企業とは20年〜30年にわたって優れた状態でいる企業
汎用品事業から投資できる適切な銘柄を選ぶのは非常に難しい
ウォーレン・バフェットの結論は
「自分が理解できる分野で強みを持ち、それが長く続くと確信できる企業に投資するのが好ましい」
ということです。