2010年から表面化したギリシャ債務危機は欧州・ユーロ(EU)危機・崩壊を招く?『EU危機はまだ終わっていない』

2010年から表面化したギリシャ債務危機は欧州・ユーロ(EU)危機・崩壊を招く?『EU危機はまだ終わっていない』

2016年現在、アメリカ、日本、新興国(特に中国)など、市場や世界経済には様々な懸念材料がありますが、その中でも特に、ユーロ(EU)の債務危機が経済規模的にも最も懸念される材料ではないでしょうか?

ユーロ(EU)圏は、欧州連合という形で多くの国がつながり合っており、さらに共通通貨ユーロでも強いつながりがあります。

欧州連合の通貨ユーロはジョージ・ソロスによるポンド危機・欧州通貨危機から誕生した?でもお伝えした通り、1990年代のポンド危機から始まった欧州通貨危機が、共通通貨ユーロを誕生させました。

その共通通貨ユーロは、ECB(欧州中央銀行)が各国の金融判断を担うことで、安定すると思われていたのですが、2010年から表面化してきた、ギリシャ債務危機から問題が深刻化していきました。

各国が共通通貨ユーロでつながり合っているものの、財政政策が個別の国に委ねられていることが原因で、再度危機が訪れました。

欧州(EU)は、強いつながりが合あるからこそ、経済発展を遂げてきたのですが、つながり合っているからこそ、たった一国(小国)の危機でも、全体に波及してしまうのです。

ECBの救済により、一時的に問題は先送りにされましたが、今後また再熱してしまう可能性は十分にありますし、それほど大国ではないギリシャではなく、ドイツ、フランス、イタリア、スペインなどの大国が危機に直面した時、次はユーロ(EU)崩壊を食い止めることはできないかもしれません。

そこで今回は、2010年から表面化したギリシャ債務危機がなぜユーロ(EU)崩壊につながってしまう原因になるのか?ユーロが抱える問題などを見ていきます。

目次

ギリシャ危機は隠蔽していた財政赤字を暴露されたことから始まった

アメリカ発のサブプライムローン問題・リーマンショックの原因により、2009年秋頃、実体経済では雇用や消費、生産面において、世界各地で厳しい状況が続いていましたが、アメリカ政府やFRBによる徹底した金融緩和などで、金融システムは維持され、株式市場は反転していました。

そんな矢先に、ギリシャに対する懸念材料が市場に飛び込んできました。

ユーロ加盟国であるギリシャの総選挙にて政権交代が起こり、旧政権下で隠蔽されていた財政赤字問題が新政権によって暴露されました。

この暴露された内容は、GDPに占める財政赤字が、公表されていた4%ではなく13%にも達するという衝撃的な事実でした。

ギリシャの財政状況は想定されていた以上に悪化していたことが判明し、市場には、ギリシャの債務返済能力を疑う声が強まり始めました。

 

本当はギリシャはEU(ユーロ)に加盟できる条件を満たしていなかった?

ギリシャの財政赤字問題を決定的にしたのが、2010年1月12日に欧州委員会によって公表された報告書でした。

ギリシャが発表する経済統計は信用できないと公言し、市場は以前から噂されていたギリシャの「ユーロ加盟疑惑」を思い出さざるを得なくなってしまいました。

ユーロに加盟するには、物価、財政、金利、為替などの項目において一定の条件を満たす必要があります。

特に、財政赤字に関しては、その水準がGDP比3%以下であること、公的債務水準がGDP比60%以下であること、という具体的な目標値が定められています。

1999年に11か国がユーロを導入した際に、ギリシャはこの目標値が達成できずに、加盟できませんでした。

2年遅れで2001年にユーロに加盟することができた際にも、市場には、本当にギリシャがユーロに加盟するための条件を満たしていたのか?という声も上がっていました。

 

 

先進国のデフォルトへの懸念で長期金利は急騰

2010年4月には、S&Pがギリシャの格付けを一気にBB+という、ジャンク級に引き下げ、機関投資家の間では、先進国のデフォルトという異例の事態が囁かれ始めます。

長期金利は1桁台に収まり切らず、天井知らずのように上昇していきました。

そして、ギリシャに追従するかのように、アイルランド、ポルトガル、スペイン、イタリアなどにまで不安が広がりました。

市場ではユーロ圏の財政問題を、こうした国々の頭文字をとって、PIIGS問題と呼ぶようになりました。

 

IMFを巻き込みギリシャを支援するが問題は解決しない

ギリシャがデフォルトするのではないかというムードが漂う中、EUはIMFを巻き込む形でギリシャ支援をまとめました。

2010年5月に、EU、IMF、ECBというトロイカ体制の下で、ギリシャに対する総額1100億ユーロにものぼる融資が決定されます。

しかし、その金融支援は、従来のIMFが行ってきたような、民間による債権放棄で債務返済可能な水準に落とした上での公的支援ではなく、国家債務残高を残したままの中途半端な計画だったのです。

結局は、市場の懸念を払拭することはできず、ギリシャの長期金利は40%近くにまで急騰し、市場はデフォルトは避けられないという危機感が高まっていったのでした。

 

ギリシャの債務危機はユーロに加盟していたのが原因

債務削減が行われなかったギリシャの公的債務は、GDP比100%を軽く突破し、資本の急激な流出による景気後退でGDPが縮小したこともあり、その数値は急速に拡大していきました。

アジア通貨危機の時のように、新興国などがこのような危機に遭遇した場合は、為替レートを大幅に切り下げ、経常収支の黒字かを通じて経済を安定させる方法が施行されます。

しかしギリシャは、ユーロという共通通貨を導入していたため、為替レートを切り下げるという手段が使えませんでした。

というより、そもそもの危機の発端は、ギリシャがユーロに加盟していたからこそ、経済基盤の弱い同国への資本流入が加速されて経済が表面的に安定していた点でした。

 

ユーロ導入によりギリシャの債券はリスクゼロと思われていた

ユーロが導入されるまで、ドイツやフランスの銀行や機関投資家が他国へ投資する際は、信用リスクと為替リスクの双方を管理する必要がありました。

通常であれば、ギリシャ・ドラクマという為替について吟味した上で、社債などを購入しなければいけません。

ところが、ユーロが導入された結果、為替リスクを考慮する必要がなくなり、ギリシャの国債などを購入する投資家は、高金利であるにもかかわらず、為替リスクゼロ、信用リスクゼロという願ってもない投資対象となったのです。

 

フランスとドイツがギリシャの債権を多く抱えている

ギリシャの財政赤字の隠蔽が発覚した直後(2009年12月時点)、ギリシャが抱える対外債務2179億ドルのうち、フランスの銀行が約36%、ドイツの銀行が約21%、債権を抱えていたことが判明しました。

この2国だけで、ギリシャ向けの60%近い債権を保有していたのです。

こうした状況が、ギリシャへの支援に関する民間債権放棄を困難にしました。

ギリシャに、過剰公務員体制、徴税システムの不備、農業・観光依存の経済といった構造問題があり、財政債権には極めて困難な道が予想されていたにもかかわらず、債務放棄の議論は円滑に進まなかったのです。

 

ギリシャをデフォルトさせるわけにはいかないため第2次支援を決定する

欧州には、ギリシャの債務再編を行えば、ドイツ、フランスの金融・経済が混乱してしまうという懸念と、先進国のソブリン・デフォルトは、リーマンショックの影響がまだまだ残っている世界経済に波乱を起こしてしまうという警戒心もありました。

しかし、2012年2月にギリシャに対する第2次支援を行うことになり、その支援額は1300億ユーロと、初回を超える金額が設定されました。

ただし、その前提として、もはや投資家による債権放棄を回避することはできませんでした。

結果、銀行を含む民間投資家は、保有するギリシャ国債に対して53.5%のヘアカットを要求され、これにより、ギリシャの公的債務残高を2020年までにGDP比120%以下に抑制するという前提で、第2次支援が決定されたのです。

 

ギリシャが直接ユーロ(EU)崩壊を引き起こす原因ではない

ユーロ圏の構成している国は、2014年1月にラトビアが加盟したことでEU加盟28カ国のうち18カ国まで増えましたが、その経済力にはかなり大きな格差があります。

GDPで計れば、最大のドイツと最小のマルタには、400倍近くの差があります。

債務危機に陥ったギリシャの経済規模も域内では9番目であり、GDPのシェアも2%程度でした。

ギリシャと同様に支援を受けることになったポルトガルやアイルランドはさらに規模が小さく、ユーロ圏の基盤が揺らぐという危機にまで発展はしませんでした。

 

ユーロ(EU)を支える上位4カ国のイタリアとスペインが危機に直面していた

ユーロ圏第1位のドイツ、第2位のフランス、第3位のイタリア、第4位のスペイン、この4カ国で域内のGDP80%近くを生み出しています。

この中の、イタリアは以前から、慢性的な財政赤字国として知られていました。

その公的債務のGDP比は、先進国の中では日本に次ぐ高さで、ギリシャ危機がはっきりしてきた2010年当時は、GDP比130%を超える水準になっていました。

イタリアは、プライマリーバランスは黒字を維持していましたが、長年にわたる国際競争力の低下で、労働生産性は大きく低下していました。

それが、ギリシャなどの債務危機を発端として、市場の注目を浴びたのです。

スペインも同様に、競争力が低迷する中で、不動産バブルによる上辺だけの景気回復に浸っていて、リーマンショックを契機とした金融収縮が起こると、その経済運営が行き詰まってしまいました。

金融業が多額の不良債権を抱えることになったのです。

スペインはそれに加えて、債務過多の状態にあった自治州政府が中央政府に支援を要請するなど、追加的な重荷も発生していました。

 

イタリア・スペインが破綻するとドイツ・フランスにも影響そしてEUが崩壊

イタリア、スペインがもし財政破綻した場合、EUの崩壊を意味します。

2009年末の時点で、イタリアとスペインの官庁と民間合計の対外借入はともに1兆ドル規模で、ドイツやフランスにおいては、イタリアに対する債権保有比率は約60%、スペインは約50%におよんでいたのです。

結局EUは、イタリア、スペインを支援し一時的に救済をするのですが、EUのいつ壊れてしまってもおかしくないような危機対応が続く中で、市場ではギリシャのEU離脱という観測が浮上しては消える、という展開が続いていました。

これは、2度にわたる巨額の支援にもかかわらず、ギリシャ経済の回復が見えてこなかったためです。

ギリシャは、ユーロを離脱して為替レートを大幅に切り下げるしか助かる方法はないのではないか、という意見が広がり始めます。

 

当初はユーロ(EU)が崩壊するまでとは想像もしていなかった

ギリシャがEUを離脱して自国通貨ドラクマに戻すという見方は、2011年ごろから市場の一部で囁かれていました。

また、逆にドイツがEUを離脱してマルクを復活させる、というシナリオが浮上したりと、様々な思考が飛び交っていましたが、EUが崩壊するなど想像もしていませんでした。

ところが、2012年に入ってから、ギリシャ国内に厳しい歳出削減などを強いられることから湧き上がる支援拒絶ムードと、ドイツなどの反ギリシャ感情の高まりが、EU崩壊の確率を徐々に高めていきます。

 

ドイツやフランスの妥協という形でギリシャを救済するしかなかった

ユーロ(EU)を離脱するのは簡単なことではなく、他国が強制的にある国を共通通貨制度から追い出すことはできないことになっています。

あくまでも、ギリシャが自発的に離脱を宣言する必要があります。

ギリシャ国内では離脱賛成派は少なくありませんでしたが、為替レートの急落で輸入コストが急増したり、弱い通貨システムへの懸念で、資本流入が途絶えてしまうことなど想定されます。

そもそも、ユーロに加盟した国が離脱し自国通貨に戻すということは、共通通貨制度の失敗を意味し、これは回避したいというのが欧州勢の本音です。

EUを離脱せずこのままユーロを採用し、歳出削減もしたくない。という甘えた世論が形成されていきます。

しかし、ドイツやフランスなども経済混乱を回避したいと思っているので、ギリシャ問題を時間をかけて解決するという方向性での妥協に向かいました。

 

ECBのドラギ総裁の発言で市場は安定を取り戻す

ギリシャだけでなく、スペインやイタリア、ポルトガルなど、EUの危機がくすぶる中、2012年7月27日にECBのドラギ総裁による「ユーロ圏を崩壊から守るためには何でもやる」と述べ、南欧国債をECBが買い入れる準備があることを世界に向けて宣言しました。

この一言は、欧州市場の懸念を払拭しただけでなく、アメリカや日本の市場にも大きな転機となりました。

各国の政治家による発言よりも、ドラギ総裁の公約こそが最大の気付け薬となり、リーマンショックからEU崩壊という暗いムードに覆われていた市場を救います。

 

中央銀行による国債買入はインフレを嫌うドイツの逆燐に触れるが他に方法はなかった

ECBは2012年9月の定例理事会で、国債買入プログラム(OMT)と呼ばれる計画を発表し、流通市場で国債を買入れる方針を表明しました。

国債購入によって市場に流出した資金は吸い上げられ、通貨供給量の変化を相殺されたので、日本、イギリス、アメリカが行った量的緩和とは一線を画すものでしたが、中央銀行による国債購入という点で、財政ファイナンスを極度に嫌うドイツ連銀の逆燐に触れました。

ドイツには1920年代のハイパー・インフレの記憶がいまだに残っており、インフレを誘う中央銀行による国債買入には徹底的に反対してきました。

しかし、欧州不安を断ち切れるのはECBしかなかったのです。

当初はドイツ連銀に理解を示していたメルケル首相も、ギリシャのEU離脱はユーロ圏の失敗を意味するとの警告に耳を傾けるしかありませんでした。

 

財政統合をしっかりしなければユーロ(EU)危機は繰り返す

ECBの決断によって、欧州債務危機とユーロ(EU)危機・崩壊の最悪の事態は一時的に免れました。

しかし、ユーロ圏の根本的な問題は、ユーロという共通通貨の基盤がしっかりとしていないまま放置されていることにあります。

1999年のユーロ導入時にすでに指摘されていた「財政統合の欠如」という問題です。

「金融政策」はECBに統合されましたが、「財政政策」は依然として個別の国に委ねられています。

ギリシャ危機に代表される南欧諸国の債務危機は、ユーロ圏として共通の財政政策が採用されていないことによるものでした。

市場の不安が払拭できても、本質的な問題が解決されなければ、将来的にユーロ(EU)危機が再熱する可能性は十分にあります

財政統合は一国の主権に関わる問題で、簡単に合意できるものではありません。

 

通貨と財政はセットでなければ成り立たない

当たり前なのですが、日本の各県やアメリカの各州が同じ通貨を使っているのは、一国としての財政基盤を共有しているから成り立つのです。

ユーロ圏の場合、通貨は同じでもドイツやギリシャがそれぞれの国会で個別に予算を組み立てているのです。

当初は、加盟国の財政規律を厳密に縛る安定成長協定が、共通通貨を支える基盤になり得ると期待されていましたが、結局なし崩しに終わってしまい、危機を生むことになりました。

この体制を強化するべく罰則規制など改革への論議は進んでいますが、まだ未完成のままです。

また、域内の金融の安定化という意味で、早期に銀行の監督体制を一元化する必要もあります。

EUでは各国金融当局がそれぞれの国内銀行の監督・監視を行っており、甘い検査体制が銀行におけるリスク管理の甘さに繋がったこともあります。

 

銀行への監督体制は徐々に改善されつつある

2012年末には、銀行の監督体制を修正するために、銀行同盟への設計図が合意されました。

  1. 単一銀行監督制度
  2. 単一銀行破綻処理制度
  3. 共通預金保護システム

この3つの柱で構成されており、すでに1と2は実施段階に入っています。

銀行同盟に関して注目する点は、EUが銀行危機への対応を、具体的にどのようにして行うのかというところです。

従来はベイルアウトと呼ばれる公的資金(税金投入)で救済を図っていましたが、2013年3月にキプロスで起きた銀行危機を踏まえ、EUはまず、社債権者や大口預金者に損失負担を求めるベイルインへと方向転換しました。

破綻処理を行う際にも、まずベイルインで銀行当事者に負担を要請することになります。

 

欧米の銀行問題に対する修正は金融システムを安定させつつあるがまだ未完成

アメリカでも、2010年7月に制定された金融規制改革(ドット・フランク)法の中で、銀行に対する公的支援を禁止することが決定されました。

こうした銀行問題に対する欧米の軌道修正は、世界的な金融システムの健全性や継続性を考える上で、極めて大きな密接な関係を持っています。

欧州に関して言えば、財政統合や銀行同盟のプロセスもまだ初期段階にあり、今後再びEU危機が再熱する可能性は十分にあることを覚えておかなくてはいけません。

 

まとめ

  • ギリシャ危機は隠蔽していた財政赤字を暴露されたことから始まった
    本当はギリシャはEU(ユーロ)に加盟できる条件を満たしていなかった?
    先進国のデフォルトへの懸念で長期金利は急騰
    IMFを巻き込みギリシャを支援するが問題は解決しない
  • ギリシャの債務危機はユーロに加盟していたのが原因
    ユーロ導入によりギリシャの債券はリスクゼロと思われていた
    フランスとドイツがギリシャの債権を多く抱えている
    ギリシャをデフォルトさせるわけにはいかないため第2次支援を決定する
  • ギリシャが直接ユーロ(EU)崩壊を引き起こす原因ではない
    ユーロ(EU)を支える上位4カ国のイタリアとスペインが危機に直面していた
    イタリア・スペインが破綻するとドイツ・フランスにも影響そしてEUが崩壊
  • 当初はユーロ(EU)が崩壊するまでとは想像もしていなかった
    ドイツやフランスの妥協という形でギリシャを救済するしかなかった
    ECBのドラギ総裁の発言で市場は安定を取り戻す
    中央銀行による国債買入はインフレを嫌うドイツの逆燐に触れるが他に方法はなかった
  • 財政統合をしっかりしなければユーロ(EU)危機は繰り返す
    通貨と財政はセットでなければ成り立たない
    銀行への監督体制は徐々に改善されつつある
    欧米の銀行問題に対する修正は金融システムを安定させつつあるがまだ未完成
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